この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
終止符.
第11章 うつろい
「ねぇねぇ聞いた?」
昼休みも終わりに近づいた社員食堂で、後からバタバタと急ぎ足で入ってきた沙耶が、奈緒の隣に腰掛けながら話しかけて来た。
「どうしたの?」
オムライスを食べる手を休めて千秋が言った。
「産まれたんだって。」
声を小さくして沙耶が言った。
「えっ?」
二人が沙耶を見る。
「部長がパパになったんだよ。今、森下さんに教えてもらった。」
「わー、やったね。…ん? でもさ、予定日って12月じゃなかったっけ。」
千秋が聞き返す。
「それがね、破水って言うの? よくわかんないけどさ、破水して病院に行ったら産むのには問題ない週数だからって、そのまま入院してご出産。」
「へ~、よかったね。で、どっちが産まれたの?」
「うふっ、女の子だって。」
「きゃ~、篠崎部長嬉しいだろうね。」
「そりゃそうだよ、待望の我が子だもん。」
奈緒は二人の会話を聞きながらコーヒーを一口飲んだ。
「社長の嬉しそうな顔が目に浮かぶ~。あはは、きっとデレデレだよね。」
千秋が笑う。
「あ…」
沙耶が口をつぐんだのを千秋は見逃さない。
「なに?」
「これは森下さんに口止めされてるんだけど…」
「そこまで言うなら言いなさい。」
「言いなさい。」
千秋と奈緒は沙耶の次の言葉を待った。
「じつは…」
「うん。」
「うん。」
「社長…入院してるらしいの。」
「えっ?」
「なんで?」
「なんかさ、どこかにできたポリープを取るとかなんとか…ほら奈緒、部長、ずっとバタついてたでしょう?」
「あぁ、そういえば…」
「社長の奥様ずっと前に亡くなってるらしいから…」
「そうなんだ…部長の奥様も心配してるだろうね。」
「早く孫の顔を見て元気になってもらわなくちゃ。」
「ねぇ沙耶、森下さんて部長の奥様に会った事あるの?」
奈緒がさりげなく聞いてみる。
「ないみたいだよ。5年位前の結婚式とかも、部長以上の人達だけ出席だったし。」
「あぁ、そういえばそうだった。」
千秋が口を挟んだ。
「どっちにしても、幸せなお嬢様に間違いない。」
「いいなー、お嬢様に生まれたかった。」
「むりむり。あはは。……ところで奈緒。」
沙耶が奈緒を見た。
「ん?」
「あと1週間だね。」
「…うん。あと一息。」
頷きながら奈緒が言った。
昼休みも終わりに近づいた社員食堂で、後からバタバタと急ぎ足で入ってきた沙耶が、奈緒の隣に腰掛けながら話しかけて来た。
「どうしたの?」
オムライスを食べる手を休めて千秋が言った。
「産まれたんだって。」
声を小さくして沙耶が言った。
「えっ?」
二人が沙耶を見る。
「部長がパパになったんだよ。今、森下さんに教えてもらった。」
「わー、やったね。…ん? でもさ、予定日って12月じゃなかったっけ。」
千秋が聞き返す。
「それがね、破水って言うの? よくわかんないけどさ、破水して病院に行ったら産むのには問題ない週数だからって、そのまま入院してご出産。」
「へ~、よかったね。で、どっちが産まれたの?」
「うふっ、女の子だって。」
「きゃ~、篠崎部長嬉しいだろうね。」
「そりゃそうだよ、待望の我が子だもん。」
奈緒は二人の会話を聞きながらコーヒーを一口飲んだ。
「社長の嬉しそうな顔が目に浮かぶ~。あはは、きっとデレデレだよね。」
千秋が笑う。
「あ…」
沙耶が口をつぐんだのを千秋は見逃さない。
「なに?」
「これは森下さんに口止めされてるんだけど…」
「そこまで言うなら言いなさい。」
「言いなさい。」
千秋と奈緒は沙耶の次の言葉を待った。
「じつは…」
「うん。」
「うん。」
「社長…入院してるらしいの。」
「えっ?」
「なんで?」
「なんかさ、どこかにできたポリープを取るとかなんとか…ほら奈緒、部長、ずっとバタついてたでしょう?」
「あぁ、そういえば…」
「社長の奥様ずっと前に亡くなってるらしいから…」
「そうなんだ…部長の奥様も心配してるだろうね。」
「早く孫の顔を見て元気になってもらわなくちゃ。」
「ねぇ沙耶、森下さんて部長の奥様に会った事あるの?」
奈緒がさりげなく聞いてみる。
「ないみたいだよ。5年位前の結婚式とかも、部長以上の人達だけ出席だったし。」
「あぁ、そういえばそうだった。」
千秋が口を挟んだ。
「どっちにしても、幸せなお嬢様に間違いない。」
「いいなー、お嬢様に生まれたかった。」
「むりむり。あはは。……ところで奈緒。」
沙耶が奈緒を見た。
「ん?」
「あと1週間だね。」
「…うん。あと一息。」
頷きながら奈緒が言った。