この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
終止符.
第12章 秘密
次の日、軽い頭痛で頭が重い奈緒はシャワーを浴び、遅い朝食もそこそこに頭痛薬を飲んでソファーにぐったりと腰を沈めた。
昨日受け取ったプレゼントのオルゴールは、おそらく沙耶が選んでくれたものだろう。
ドーム型のガラスの中に、サンタが乗ったソリを引くトナカイがいる。
下部に取り付けられたネジを回すとトナカイの足が動き出す。
"サンタが街にやってくる"のメロディが流れ、雪をかぶったクリスマスツリーの周りをトナカイが廻り続けた。
オルゴールの音色は楽しいメロディを物悲しく変えてしまう、だがこの曲は優しく奈緒を元気づけてくれた。
昨夜帰宅した奈緒はベッドに横たわり、何度もネジを回してはにこやかなサンタを眺めた。。
「今年も一人のクリスマスか…」
独り言をいいながら壁に貼り付いた夏色の景色を眺めた。
篠崎との約束の時間を確認し、たくさんの花で満たされた花瓶の水を替えて、社長から贈られたカードをバッグから取り出した。
力強い筆書きの文字が言葉として胸に迫ってくる。
ソファーに座り何度も読み返しながらふと、壁の青い海と白い砂浜に目をやった。
「純、ちゃんと終わりにしたわ…あなたのお母さんと私は違う…」
純の母親は、愛しい人の子どもを育てながら、捨てられた虚しさが胸を被っていたのだろうか。
悲しみを酒で癒し、我が子と交わるなんて…
心が病んでいたとしか思えない。
奈緒はため息をつきながら再び視線をカードの上に落とした。
社長の名前に目を止める。
「ふじた としゆき…としゆき………としゆき……としゆき…」
奈緒は何かを思い出そうと必死に記憶をたどった。
「とし…ゆき…としゆき…」
奈緒の目は壁の青空に貼り付いた。
あぁ…
「…純…」
あの夜だ…
──知らない男の名前を呼ぶんだ
──としゆきって誰だよ
──としゆきって誰だよ
──としゆきって…
「まさか…」
奈緒はしばらく呆然と壁を眺め、次の瞬間、何かに突き動かされるように出かける支度を始めた。
頭痛は問題ではなくなっていた。多田の事も頭から消え去っていた。
鳴り響く胸の鼓動を押さえながら時間も見ずに外へ飛び出した。
部長は知っていたんだ。
社長に子どもがいた事を。
奈緒は自転車には目もくれず、駅へと走り出した。
昨日受け取ったプレゼントのオルゴールは、おそらく沙耶が選んでくれたものだろう。
ドーム型のガラスの中に、サンタが乗ったソリを引くトナカイがいる。
下部に取り付けられたネジを回すとトナカイの足が動き出す。
"サンタが街にやってくる"のメロディが流れ、雪をかぶったクリスマスツリーの周りをトナカイが廻り続けた。
オルゴールの音色は楽しいメロディを物悲しく変えてしまう、だがこの曲は優しく奈緒を元気づけてくれた。
昨夜帰宅した奈緒はベッドに横たわり、何度もネジを回してはにこやかなサンタを眺めた。。
「今年も一人のクリスマスか…」
独り言をいいながら壁に貼り付いた夏色の景色を眺めた。
篠崎との約束の時間を確認し、たくさんの花で満たされた花瓶の水を替えて、社長から贈られたカードをバッグから取り出した。
力強い筆書きの文字が言葉として胸に迫ってくる。
ソファーに座り何度も読み返しながらふと、壁の青い海と白い砂浜に目をやった。
「純、ちゃんと終わりにしたわ…あなたのお母さんと私は違う…」
純の母親は、愛しい人の子どもを育てながら、捨てられた虚しさが胸を被っていたのだろうか。
悲しみを酒で癒し、我が子と交わるなんて…
心が病んでいたとしか思えない。
奈緒はため息をつきながら再び視線をカードの上に落とした。
社長の名前に目を止める。
「ふじた としゆき…としゆき………としゆき……としゆき…」
奈緒は何かを思い出そうと必死に記憶をたどった。
「とし…ゆき…としゆき…」
奈緒の目は壁の青空に貼り付いた。
あぁ…
「…純…」
あの夜だ…
──知らない男の名前を呼ぶんだ
──としゆきって誰だよ
──としゆきって誰だよ
──としゆきって…
「まさか…」
奈緒はしばらく呆然と壁を眺め、次の瞬間、何かに突き動かされるように出かける支度を始めた。
頭痛は問題ではなくなっていた。多田の事も頭から消え去っていた。
鳴り響く胸の鼓動を押さえながら時間も見ずに外へ飛び出した。
部長は知っていたんだ。
社長に子どもがいた事を。
奈緒は自転車には目もくれず、駅へと走り出した。