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終止符.
第12章 秘密
奈緒は中学生の時に母親を失った篠崎の妻、愛子の事が気になった。

「部長、奥様は社長の過去をご存知なのでしょうか?」

「結婚前に知らされたよ。」

「よそに父親の子供がいる事も?」

「あぁ。」

奈緒は少しほっとした。

「それならもう母親の事で自分を責める必要はないと分かったんですね。」

「………」

篠崎は口をつぐんだ。

「…違うんですか?」

罪がないのは子供だけ。
巻き込まれたのは子供達。

責めるべきは父親以外にいない。


「彼女は、妻は…今でも自分を責めているだろう。」


篠崎は沈痛な面持ちで下を向いた。


「どうして…」

奈緒には理解出来なかった。

父親が家族を裏切っていたという事実を知れば、母の死は自分のせいではないと理解できる筈だ。

「いったいどうしてなんです。」

「すまない。これ以上は言えない。」

篠崎は口を閉ざした。

「部長…」

「いつかは君にもわかる時が来るかもしれないが、今は知らない方がいい。」

篠崎の表情には、何かを隠す後ろめたさはなく、むしろ、何かを守っているような強さが感じられた。


それは妻?
社長?
それとも私?


奈緒はそれ以上問い詰める事が出来なかった。

「わかりました。」

篠崎は深く頷いて冷えたコーヒーを飲み干した。


「ところで…、今朝出社したら、多田が寺田さんに慰められていたけど。」

「えっ?」

「彼はなかなかいいヤツだろう?」

「あぁ、すっかり忘れていました。」

奈緒は唇を軽く手で押さえた。

「前に進むんだよ。」

「わかっています。」

奈緒は微笑んだ。

「お子さんは、かわいいですか?」

「あぁ、凄く小さくて柔らかい。」

「ふふっ。パパなんですね。」

「あぁ、そうだよ。」

「社長、早くお仕事に復帰出来るといいですね。」

「そうだね。」

二人は優しく見つめ合った。

気がつけば、人目に付く場所に二人でいた。

周囲の視線に怯える必要はなくなっていた。


これでいい。十分に幸せな時を過ごせた。
思い出に変えてゆける。

誰も傷付けずにお互いの元いた場所に戻る事ができる。


奈緒はほっと胸を撫で下ろした。


「それじゃあ私、帰ります。」

「あぁ、お疲れさま。」

奈緒は一礼し、初めて篠崎に背を向けて歩き出した。



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