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終止符.
第13章 ひとり
「ところで純、目ぼしい就職先は見つかった?」

沙耶が話題を変えた。

「まだなんですけど、色々と検討中です。」

「ウチの会社にしなよ~。ほら、前に社長とも会ってるし、あ、あの時一緒にいた経理部の篠崎部長は、今は副社長なんだよ。」

「へー、そうなんですか。」

純がちらりと奈緒を見た。

奈緒は頬杖をついて目をトロンとさせながら別の事を考えていた。



純が藤田の元で働く事になれば、純の将来は約束されたようなものだ。
純の気持ちさえ傷付かなければ、実の父親の元で幸せに……。

………

篠崎と純が近くなれば、そこに私はいない方がいい。



「そうなんだよ。経理部の女子社員はがっかりさ。ね、沙耶。」

森下が沙耶をからかった。

「あはは。まあね。」

「…僕やめときます。」

「えっ?」

「なんで?」

みんなが純を見た。

「篠崎部長にはかなわないから。」

「………」


奈緒は驚いて純を見つめ、他の3人は呆気にとられていた。


「あはは、純クン、諦めるのは早い。君は将来有望だ。」

「あはは、森下さんそれ社長のマネ?」

千秋が笑いながら言った。

「純ならきっと社長に可愛がられるよ。」

沙耶に言われ

「そうかな、じゃあちょっと考えてみます。」

と純が答えた。


奈緒の心は痛んだ。

どうにかして純を守りたい。
全てが一段落したら去って行こうか。
それが純の為かもしれない。

純は真実に耐え、受け入れられるだろうか。
その時私は必要だろうか。
純の将来を曇らせるのはもしかしたら私ではないだろうか。


ようやく自分の気持ちに気付き始めた奈緒だったが、頭の中はごちゃごちゃになり更に酔いが回り、ぼんやりと座ってゆらゆらと揺れていた。

「あ~、奈緒が酔っ払ってる。……ちょっと私、タクシー呼んでもらってくる。」

沙耶が席を外した。

「奈緒さん、大丈夫ですか?」

奈緒はコクンと何度か頷いたが半分は眠っていた。

「純、あなたが送ってね。」

千秋が言った。

「前にも奈緒を送ったから家はわかるよね。」

「はぁ…。」

「送りオオカミになるなよ。」

森下が半ば真面目な顔で純に釘を刺した。

「タクシーすぐ来るって。」

戻って来た沙耶が言った。

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