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終止符.
第14章 想い
「奈緒さん、大丈夫ですか?…着きましたよ。」

奈緒の肩を組むようにして腰を支えながらタクシーを見送り、純はそのままアパートの階段を上がった。


「ほら、ちゃんと歩いて下さい。…鍵はどこですか? 」

千鳥足の奈緒はよろけながらも、なんとかバッグから鍵を取り出したが、鍵穴に差し込む事が出来ずにドアノブだけをガチャガチャと鳴らしていた。

「開かない…」

「貸して下さい、僕が開けますから。」

「おうちに入れない。」

「入れますよ、ちゃんと立ってて下さいね。」


「はーい。」


奈緒は機嫌よく返事をしてふらつきながら待っている。

完全に酔っ払っていた。


「奈緒さん、開きましたよ、さあ入ってください。」

「はーい。」

奈緒は嬉しそうに片手を挙げ、パンプスを履いたままで部屋にどんどん入って行った。

「ちょっと奈緒さん、靴脱がないと…まいったな…電気点けますよ。」


純はドアを閉じて靴を脱ぎ、キッチンとリビングの明かりを点けた。


「あぁ…」

靴を履いたまま薄暗いベッドに倒れ込んでいる奈緒を見つけた。

「どうしてそんなになるまで飲むんですか。」

純が話し掛けても返事がない。

「靴、取っちゃいますよ。」

純はうつ伏せになっている奈緒の足からパンプスを外して玄関に並べに行った。


リビングを通って奈緒のいるベッドルームに戻ろうとした純は、ふと壁に掛けられた見覚えのある風景に目がいった。


「僕が作ったやつだ…」


リビングのソファーに腰掛けて自分の力作を眺める。


「ん?」

純はそのジグソーパズルの右下の隅に、何か違う景色を見つけ、確かめようと立ち上がり壁に近付いた。


「…あ…」


それは純が送った絵葉書だった。

明るいビーチと夕暮れの浜辺。

対照的なその景色を奈緒はいつも見つめていた。

「あれ?」

純は足元に置かれたカラフルな道具箱の中に、膨らませた紙風船を見つけてしゃがみ込んだ。

それをいくつか手に取ると、下からジッパー付きの袋に入れられたシャボン玉セットが出てきた。

「僕があげたプレゼント。」

袋ごと手に取ろうとした時、箱の一番底にオレンジ色のクリアファイルを見つけた。

中に紙が入っている。

純はファイルを手に取ると中の紙を抜き出した。

「えっ?」


純は驚いて仰け反った。


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