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終止符.
第14章 想い
「そんな風に言わないで。」

「僕はみんなを不幸にした。」

「いい加減にして!」


バシッ!


「……」


純に平手打ちしていた。

純は呆気にとられて奈緒を見た。


「しっかりしなさい純、あなたは愛されているのよ、どうでもよければ心配したりしない…どうにかしてあなたの行先を明るく照らそうとしているのに…それがわからないの?…純のばかっ…ばかっ…まぬけ!…この頑固者…おたんこなす!」


奈緒はこぶしで純の胸をどんどんと叩いて叫んだ。


「な、奈緒さん…」


純は怒っている奈緒に呆然としたまま叩かれていた。

奈緒の攻撃は続く。


「昨日だってどんなに捜したか、あなたのせいでびしょびしょよ!…もう、こんなに心配させて…みんなに変な目で見られて…ばかっ…ばかっ…もうあそこのコンビニにはいけないわ!…連れて行くわよ、…引きずってでも連れて行くんだから、いいわね、この頑固者!スカートも絞ったのよ!大人しく付いてきなさいっ…」


支離滅裂だった。


「どこに?」

叩かれながら純が聞く。

「あの公園よ!…黙ってついて来なさい!…分かったわね!」


「わかりました。」

「…えっ?」


奈緒の攻撃が止んだ。


「一緒に行ってください。」

「…なに?」


息切れしながら奈緒が聞いた。

「だから、僕のそばにいて下さい。」

「………」


奈緒は黙り込んだ。

愛子が純に何を話すのか知りたかった。

篠崎の妻である愛子をこの眼で見てみたかった。

何も知らない妻。
幸せな結婚生活。
疑う事を知らないお嬢様。

少しだけ

愛していた人の妻を見てみたい…

妻への興味が沸いた。

それは優越感に浸っていた時の感情ではなく、心の中で詫びたい気持ちもあった。

「送って行くだけにするわ、すぐに帰る。…あなたもそこから…お友達の所に行くといいわ。」

「はい。…奈緒さん。」


純は返事をしながら奈緒を抱き締めた。


「な、なに?」

「愛してる。」

「………」

「嬉しいです。」

「…痛かった?」

「もうできないかも。」

「なにが?」

「こういうコト。」


奈緒の顎を指先で持ち上げ、軽くキスをした。


「そ、そこまでにしてね、約束は5時なのよ。」

「それなら間に合う。」

「純…だめ…」




幸せな二人だった。
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