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終止符.
第3章 逢瀬
いつもより少し高いヒールの靴を履く。

いつもと変わらない服を選び、下着は大胆なものを選ぶ。

普段通りに仕事をこなし、仲間と雑談しながら帰り道を歩く。

人目に付くのを避ける為に、奈緒は篠崎と二人で食事に出掛けた事はなかった。

「じゃあね。奈緒、妹さんとパーティー楽しんでね。誕生日おめでとう。」

沙耶と千秋からのプレゼントはゴールドのブレスレットだった。

「素敵なプレゼントをありがとう。」

「食事はまた今度ね。」

「今日はごめんね。」

「いいわよ、じゃあまた来週。」

二人に軽く手を振り駅で別れる。


奈緒は一人で軽い夕食を 済ませ、電車に乗って篠崎に指定されたホテルに向かう。

そこは初めて篠崎に身を任せた場所だった。

震える奈緒を優しく抱きしめ、ゆっくりと時間をかけ、初めての悦びを教えられた場所。

奈緒の身体を知りつくし、失神する程の快楽を与えてくれる男。

離れられない。

自分でも信じられない程大胆な女になった。

篠崎が奈緒を変えた。

2年が過ぎた今でも、奈緒はそんな関係を後悔した事は一度もなかった。


ホテルの一階ラウンジでコーヒーを飲みながら篠崎を待つ。

フロントでチェックインする篠崎と目線を合わせ、お互いを確認する。

先に部屋に入った篠崎からのメールを受け取り、部屋の番号を確認すると、奈緒は化粧室で口紅をひき直し、エレベーターに乗って篠崎の元へと急いだ。

早く逢いたい。
抱かれたい。

ドアをノックすると、すぐに篠崎が奈緒を迎え入れた。

「待ってたよ。」

「部長。」

ドアを閉じて抱き合う。

「奈緒、誕生日おめでとう。」

篠崎が部屋の明かりを消すと、部屋の奥にあるテーブルに置かれたバースデーケーキが、蝋燭の灯りで揺れて見えた。

「わぁ、素敵。」

近付くとケーキの側に小さな箱がある。

「これは。」

「気に入ってくれるかな。」

開けてみるとピンクダイヤのピアスが入っていた。

「部長。」

「どう?」

「凄く素敵。ありがとうございます。」

奈緒はピアスを付け替えて篠崎に見せた。

「よかった。よく似合うよ。」

「ありがとうございます。大切にします。」

奈緒は微笑み、篠崎を抱きしめた。

「さあ、蝋燭を吹き消して、全部溶けてしまいそうだ。」

「ふふ。はい。」


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