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終止符.
第16章 愛しい人
「ねぇ、奈緒。…私の結婚式には必ず出席してよね。」
沙耶がココアの入ったカップを両手で包むように持ちながら話しかけた。
「いつだっけ?」
「来年の3月の終わり。」
「……たぶん大丈夫。」
キッチンから持ってきたコーヒーを片手に、奈緒はソファーに座っている沙耶と、テーブルを挟んで向かい合った。
「たしか千秋の時もそう言ってたけど、招待状を送ったら返信は欠席になってたじゃない。」
「しょうがなかったのよ、大事な取引先との仕事だったんだもの。」
コーヒーを一口飲んで奈緒が答えた。
「あのさ。」
「なぁに?」
「どうしてこんな、職場が目と鼻の先にあるアパートに引っ越したの?……これじゃあ会社と家を往復するだけの生活じゃない。」
沙耶はココアを飲み干してカップをテーブルに置き、軽く腕組みをした。
奈緒は両肩を上げて少し首をすくめ、またコーヒーを飲んでから言い訳を始めた。
「あの時はうちの会社が忙しくなってきて、残業が増えたから通勤だけで疲れてたの、だから丁度いいのよ。それにもう すっかり慣れちゃった、ふふっ…」
「黙って消えるなんて…、連絡も取れないし──…あの時電話してきた純の様子、取り乱してて大変だったのよ。」
沙耶が不服そうに口を尖らせた。
「すぐに沙耶には連絡したんだからその事はもう許して…、あの時はバタバタしてたの、本当にごめんなさい。…それより千秋のすみれちゃん、いくつになった?」
奈緒は無理やり話題を変えた。
「2才…かな?」
「そっか…」
「千秋も出席してくれるんだから奈緒もお願いね、千秋の時みたいにお花とかお祝いだけなんてやめてよね。」
沙耶が念を押した。
「わかりました。」
「そういえば、あの時…。」
「えっ?」
「千秋の結婚式の時…、来ないって分かってるのにさ、純ったらずっと奈緒を捜してた…。なんか……3年経った今でも切なくって忘れられない。」
「………」
奈緒の胸がしくしくと傷んだ。
「もう、可愛らしい彼女できたかしら?」
「まさか…」
「だって彼、モテるに決まってるじゃない。」
「あのさ、通勤時間が長くなるのに、わざわざ奈緒のいた部屋に引っ越してるのよ……、待ってるみたいに。」
「………」
奈緒は沙耶から視線を外し、壁のジグソーパズルに目をやった。
沙耶がココアの入ったカップを両手で包むように持ちながら話しかけた。
「いつだっけ?」
「来年の3月の終わり。」
「……たぶん大丈夫。」
キッチンから持ってきたコーヒーを片手に、奈緒はソファーに座っている沙耶と、テーブルを挟んで向かい合った。
「たしか千秋の時もそう言ってたけど、招待状を送ったら返信は欠席になってたじゃない。」
「しょうがなかったのよ、大事な取引先との仕事だったんだもの。」
コーヒーを一口飲んで奈緒が答えた。
「あのさ。」
「なぁに?」
「どうしてこんな、職場が目と鼻の先にあるアパートに引っ越したの?……これじゃあ会社と家を往復するだけの生活じゃない。」
沙耶はココアを飲み干してカップをテーブルに置き、軽く腕組みをした。
奈緒は両肩を上げて少し首をすくめ、またコーヒーを飲んでから言い訳を始めた。
「あの時はうちの会社が忙しくなってきて、残業が増えたから通勤だけで疲れてたの、だから丁度いいのよ。それにもう すっかり慣れちゃった、ふふっ…」
「黙って消えるなんて…、連絡も取れないし──…あの時電話してきた純の様子、取り乱してて大変だったのよ。」
沙耶が不服そうに口を尖らせた。
「すぐに沙耶には連絡したんだからその事はもう許して…、あの時はバタバタしてたの、本当にごめんなさい。…それより千秋のすみれちゃん、いくつになった?」
奈緒は無理やり話題を変えた。
「2才…かな?」
「そっか…」
「千秋も出席してくれるんだから奈緒もお願いね、千秋の時みたいにお花とかお祝いだけなんてやめてよね。」
沙耶が念を押した。
「わかりました。」
「そういえば、あの時…。」
「えっ?」
「千秋の結婚式の時…、来ないって分かってるのにさ、純ったらずっと奈緒を捜してた…。なんか……3年経った今でも切なくって忘れられない。」
「………」
奈緒の胸がしくしくと傷んだ。
「もう、可愛らしい彼女できたかしら?」
「まさか…」
「だって彼、モテるに決まってるじゃない。」
「あのさ、通勤時間が長くなるのに、わざわざ奈緒のいた部屋に引っ越してるのよ……、待ってるみたいに。」
「………」
奈緒は沙耶から視線を外し、壁のジグソーパズルに目をやった。