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終止符.
第16章 愛しい人
純の前から姿を消して、もう3年半が過ぎていた。

時々訪ねて来てくれる沙耶が純の事を口にする度に、奈緒の胸は切なく痛み、辛かった。

沙耶の口ぶりからすると純は奈緒との事を、沙耶には何も告げていないようだった。


「ねぇその夏っぽいパズル、奈緒が作ったの?」


奈緒の視線をたどって沙耶が聞いた。


「ううん…貰ったの。」

「誰に?」

「前のアパートの隣に住んでいた人。」

「ふ~ん…その人引っ越しちゃったの?」

「そう、置き土産、ふふっ。」

「……ねぇ、素敵な人だった?」


いたずらな目で沙耶が聞いた。

奈緒は懐かしそうに微笑んだ。


「えぇ…、とても。」

「あはは、男性だったんだ…」


奈緒の顔を観察していた沙耶が笑った。


「じつは惚れてたとか?」

「ふふっ…隣にいる時には、気づかないのよ。」

「変なの……離れてから気付くの?」

「まあ…、そうかな。」

「遅すぎるぅ。あはは──…で、今は?」

「えっ?」

「だって、未だに男がいないってさ、変でしょ…。」

「そんな暇ないって…」

奈緒がため息混じりに言った。


「干からびていくわよ。」

「致し方なし、よ。」


奈緒がまた首をすくめた。


「純と連絡取ってる?」

「いいえ…」

「えっ…ここへ来た事は?」

「うちへ?…ないわよ。」

「一度も?」

「そうよ、だって純はここ知らないもの。」


沙耶は一瞬不思議そうな顔をした。


「そ、そっか、そうよね…、あはは……あ、そうだ、彼来てたわよ。」

「えっ?」

「こないだの藤田社長のお通夜に来てた。」


奈緒は少しだけ身を乗り出した。


「──…本当?」

「声をかけたかったんだけどさ、なにしろ人が多いから、遠くからしか見えなかったの。」

「…どんな様子だった?」


奈緒ははやる気持ちを押さえて静かに聞いた。


「社長と親しかったのかなぁ…、だってずっと前に居酒屋で会っただけだとばかり思ってたんだけどさ、わざわざお通夜に来るなんて…」

「それで、様子は?」

「お焼香の後、ご遺族に深々と頭を下げて、何だか…篠崎社長に肩を叩かれたりしてた…泣いてるようにも見えたけど、よく分かんない。」

「…そう。」



純…

わだかまりは解けた?


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