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終止符.
第16章 愛しい人
「さてと…、後はカタログを送るんだよね。」

奈緒は立ち上がり商品カタログを何冊か持ってきた。


「私、今年下の彼と付き合ってるんです。」

「あら、そうなの?」

「年下ってどう思います?」


手を動かしながら知佳が尋ねる。


「どう、って…何か問題でも?」


奈緒は茶封筒に宛名書きを始めた。


「5つ年下なんです。」

「それが?」

「驚かないんですか?」

知佳が奈緒を見た。


「えっ?」


奈緒も知佳を見た。


「だって友達はみんな驚いていろいろと言うんです。そのうち捨てられるとか、本気になるな、とか…」


「でも好きなんでしょ。」

「そうなんです…可愛くて…」


知佳が照れて俯いた。


「あはは…わかるわ。」

「えっ?……もしかしたら奈緒さんも年下と付き合った事、あるんですか?」


知佳の勢いに、奈緒は焦って答えた。


「ま、まぁ…過去には…」

「わぁ、それってスッゴい気になるんですけど、詳しく聞かせてください。」


知佳は仕事をほっぽり出した。


「秘密。」


奈緒は冷静に宛名を書き終えた。


「えぇーっ、聞きたい聞きたい。いくつ年下だったんですか?」

「だから秘密。うふふ、ほら、お仕事お仕事。」

「はぁ~い。いつかきっと聞き出しますからね。」

「あはは、無駄な努力に終わるわよ…、あ、これにも切手を貼ってくれる?」

「いいですよ。」

「私、ちょっとお茶を入れてくるわね。」


奈緒はそう言って立ち上がった。


「お願いします。外は寒いですからお茶飲んで暖まってから帰りましょう。」


「ちょっと待っててね。」


奈緒は冷たい廊下に出て右に曲がり、突き当たりにある給湯室に向かった。


「さむ~い。」


独り言を言いながら腕を組むようにして両腕を擦る。

急須にお茶を入れ、給湯器からお湯を注いだ。

白い湯気を見つめながら、知佳の彼と純が同じ年令だと思うと可笑しくなった。



純の年令は教えられないな…



お湯を止め、急須と湯呑みをお盆に乗せようとしていると、バタバタと足音を響かせて知佳が走って来た。


「な、奈緒さん…ちょっ…ちょっと来てください。」

「どうしたの? …クレームの電話?」

「ち、違いますよ…お…お客様です…」

「えっ?」

「すっごく素敵な人。」

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