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終止符.
第4章 疼き
次の日の朝早く、奈緒は家路に着いた。

昨夜の篠崎との行為で、また身体が変わってしまった気がする。

今すぐ抱かれたかった。

身体が疼いた。

欲しい

あなたが欲しい。


アパートの階段を上がると、自分の部屋のドアノブに紙袋が掛かっている。

「……」

紙袋を外して中を覗く。

「えっ?」

中にはたくさんの駄菓子が入っていた。

「なにこれ。」

とりあえず家に入り紙袋の中を探る。

きなこ棒、チョコ棒、ヨーグル、串カステラ、ラムネ菓子、酢昆布、水飴、風船ガム、ポン菓子、綿菓子……

誰かが間違えたのだと思いながら、ふと袋の隅に白い封筒を見つけた。

開けてみる。

『奈緒さんへ

沙耶さんから聞きました。
誕生日おめでとうございます。

金欠病の僕からのささやかなプレゼントを、どうか受け取ってください。

純 』


奈緒は紙袋に一緒に入っていた紙風船を膨らませながら、駄菓子を選んでいる純の姿を思い浮かべた。

心がなごむ。

紙風船は10個分入っていた。底の方には折り紙やシャボン玉が入っていて奈緒を笑わせた。

純の匂いを思い出す。
乱暴なキスを思い出す。

若さが眩しい。

純と真二が重なり、真っ直ぐに生きていた自分が懐かしい。


ドアのチャイムが鳴った。

「はい。どちら様ですか?」

「おはようございます。金欠病の患者です。」

「あはは。ちょっとお待ちください。」

ドアを開けると照れるような笑顔の純がいた。

「気に入ってもらえましたか?」

「えぇ、どうもありがとう。 笑っちゃった。」

「よかった~。捨てられたらどうしようかと…」

「そんな事しないわよ。」

「昨日は奈緒さんが留守だったので、ここに掛けておいたんです。」

「そうなの。ごめんなさい。」

「いいんです。あ、バイト遅刻するんで、これで失礼します。」

「いってらっしゃい。」

「あ、僕は今月の30日が誕生日なんです。よろしくお願いします。」

「図々しい奴だわ。」

「あはは。ではいってきます。」

「いってらっしゃい。」

元気よく階段を駆け降りる靴音が響く。

もう梅雨が明ける。

窓からシャボン玉を飛ばしながら、篠崎を思う。

純にも妬いてくれるだろうか。


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