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終止符.
第4章 疼き
「お疲れさま。まずは乾杯だ。」

「それじゃあ、夏の到来に。」

「沙耶の大好きな夏に。」

「カンパーイ!」

3人でビールジョッキを軽く合わせ、渇いた喉に注ぎ込む。

「ぷはーうまい!」

「あはは。森下さんいい飲みっぷり!」

沙耶の明るい声が響く。

奈緒は、森下が時折自分を気にする視線を感じながら、人の噂話ばかりする嫌な女を演じて見せた。

沙耶は眉を潜めて奈緒を制したが、奈緒は酔ったふりをしながらバカを演じた。

沙耶はがんばって明るい話題を提供し、森下はそれに乗った。

森下にどう見られようと構わなかった。篠崎がいてくれさえしたら、他の男はいらなかった。

先に帰ると言って席を立った奈緒を、沙耶が店の外まで見送りに来た。

「奈緒…」

「ん?」

「お芝居でしょ。」

「………」

「奈緒の事はよく知ってるもん。」

「ふふ。」

「気を使い過ぎ。」

「今度おごってね。」

「森下さんと上手くいったら、3人でね。」

「楽しみ~。」

「気をつけてね。」

「大丈夫。酔ってないから。」

「あははは。ありがとう奈緒。」

「うん。じゃあ明日ね。」

奈緒は駅に向かい、沙耶は店内に戻った。

沙耶が上手くいったら、残るは私一人か。

篠崎に別れを切り出す事ができない。

自分の気持ちに嘘はつけない。

篠崎の愛を疑う事ができれば、自分が足かせになっているのだと、感じる事ができれば、それは別れのきっかけになる筈だ。

けれどもそんな事を微塵も感じさせない篠崎を、奈緒は疑う事なく愛した。

逢えない時間が長い程、熱さを増した愛撫へと繋がってゆき、淫らに変わってゆく奈緒を、篠崎は更に濡らした。

篠崎の為なら、どんなに恥ずかしい事でもできた、いやらしい女にもなれた。


いつも優越感に浸っていた。

彼を支えているのは私。
彼が愛しているのは私。
ねぇ奥様、あなたじゃない。


篠崎の身体の上で淫らに身体をくねらせ、蜜を滴らせながら、奈緒は腰を振り続け、篠崎を悦ばせた。

次に逢える日が決まってからは、奈緒は自分自身を慰める事なく、篠崎の身体を待ちわびた。

どんなに疼いても。

眠れない夜でも。



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