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終止符.
第5章 霧の中
「奈緒さん…もっと感じて…ハァハァ…あいつじゃない…ハァハァ…僕に溺れて…ハァハァ…」

反り返る奈緒の身体を更に突き刺し、腰を揺らし、引き抜いてはまた攻める。

「あぁッ…やめて…やめて…あぁッ…純…アッ…アッ…ンッンッ…あぁッ…純…」


純は子供ではなかった。

奈緒の身体を満たし、心を乱し、ひざまづかせる男だった。

「僕を使って…ハァハァ…あいつを…忘れて…ハァハァ…あぁッ…うぅッ…ンッンッンッ…」

何度も達して痙攣している奈緒の中で、純は勢いと強さを増し、深く達する奈緒を見つめながら、肌の上に放った。

「ハァ…ハァ…あぁ…」

「ハァハァ…奈緒さん…奈緒さん…」


強く抱きしめられ、優しいキスを受け入れながら、これで終わりにしようと思う。

純の熱さが怖い。

巻き込まれそうな自分が怖い。

純に翻弄されてしまう自分が情けない。

「何を考えているの?」

奈緒の髪を撫でながら純が問いかける。

「情けないのよ。」

「どうして。」

「あなたに…」

「僕に?」

「………」

「なに?」

「あなたはいったい、どんな女性と付き合ってきたの?」

「………」

「純…」

「愛した人は、奈緒さんだけだよ。」

優しいキスを繰り返す純の瞳が、大人びていた。

「奈緒さん、シャワーを浴びてきたら?」

「うふふ、自宅は隣よ。」

「まだ側にいて。」

「シャワーを浴びたら帰るわ。」

「………」

「純…」

「………」

「終わりにしましょう。」

「僕が気に入らない?」

「……えぇ…そうよ。」

「………」

「あなたがいなくても、彼との事は、いつかは終わりにするわ。それは私が決める。」

奈緒はそう言って、バスルームに向かった。

「奈緒さん、これ。」

手渡されたのは、純のTシャツだった。

「ありがとう。お借りします。」

狭いユニットバスのバスタブの中に入り、シャワーカーテンを閉める。

勢いよくシャワーを浴びながら、今日は純の誕生日だった事を思い出した。

この先何人の女が、純に溺れてゆくのだろう。

汗ばんで喘ぐ純の姿を思い出し、深く、熱くキスをされた感覚がそこに蘇る。

「部長…私…」

篠崎への秘密ができてしまった。

シャワーを顔に浴びせながら、篠崎のせいだと思いたい奈緒だった。


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