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終止符.
第6章 狭間(はざま)
5人はほっとした表情で腰を下ろした。

「ふぅ~。」

森下がため息を漏らす。

「愉快な社長さんですね。社長ってもっと怖い感じだと思ってたな。」

「全社員の名前や所属部署をすべて把握しているのよ。」

千秋が説明する。

「へぇー。」

「俺もあの社長だからこの会社を選んだようなもんさ。」

「アタシも。」

千秋が森下に同意した。

「純の名前も忘れないわよ、ふふっ。」

沙耶が笑った。

「僕、採用して貰えるかな。」

「ま、頑張って勉強しなさい若者。あはは。」

千秋がからかう。

奈緒は酎ハイを追加していた。

「奈緒、ペース早っ。」

「今日は財布の心配しなくてもいいから…ふふっ」

「篠崎部長はどんな人なんですか?」

奈緒が咳払いをする。

「やり手だし、女子社員の憧れの的さ、まあ俺の次に、かな。」

「あははそうそう。」
「あはは。」

沙耶と千秋が笑う。

「奈緒さんも憧れてるんですか?」

「そりゃそうよ、ねぇ奈緒。」

「だって素敵だもの。」

奈緒の携帯が震えた。

篠崎からのメールだった。

『もしも抜け出せたら、あのホテルのラウンジへ来て欲しい。
12時までなら待てる。』

「奈緒、妹さんからなら…」

沙耶が言った、

「大丈夫。明日来るんだって。」

「じゃあ、今日はゆっくりできるね。」

「うん。」

奈緒は純の視線を感じながら、酎ハイのおかわりを頼んだ。


タイミングが悪過ぎる。

純が現れてから、すべてのタイミングが狂ってしまっているような気がする。

二人きりで逢いたい気持ちは募るばかりで、篠崎も奈緒もゆっくりと愛を確かめる時間を持てないでいた。


「ねぇ、そろそろカラオケに行かない?」

千秋が言った。

「あぁ、そうだった。カラオケ行こう。ここは社長様に甘えちゃっていいんだもんね。」

「よーし、行こう。」

「奈緒さんは?」

「もちろん行くわよ。」

半ばヤケになって飲んでいた奈緒は、今日急いで逢う事よりも、次に逢える日を待ってゆっくりと愛し合いたいと思った。

部長…ごめんなさい。


「それじゃ、社長に挨拶をしてから出ようか、」

「さんせーい。」

5人はぞろぞろと店の奥へと足を進めた。

奈緒はかなり足をふらつかせていた。

「も~、奈緒はここで待ってて。」

「はい。」


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