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終止符.
第7章 ひび割れ
奈緒は店の外に出て、行き来する人の群れを見つめていた。

すべての人が幸せそうに見える。

幸せって何?

篠崎のメールを確認する。

よほどの事があるのだろうか。


「奈緒さん。帰りましょう。」

店から純が出てきた。

「えっ?」

「もうだいぶ酔ってるみたいだし、早く…」

「ちょっと待ってよ。何を言ってるの?どうして私があなたと帰るのよ。」

「いいから早く…」

純は無理やり奈緒の手を引いた。

奈緒が振りほどく。

「離して!黙って帰る位なら別の場所へ行くわ!」

「別の場所?」

「……」

「あぁ、やっぱりさっきのメール…」

「……」

「奈緒さん…多分もう…」

「あ、いた。奈緒!ねぇ聞いて!」

店から出てきた沙耶が、慌てた様子で奈緒に駆け寄る。

「どうしたの?」

「沙耶さん!」

森下と千秋も出てきた。

「いやー、良いニュースだ。」

「ホント良かった。」

「何なのみんな。」

ワケがわからず奈緒が聞く。

「あのさ。」

沙耶が興奮を抑えながら言った。

「ご懐妊だって。」

「えっ?」

「篠崎部長が、パパになるんだよ!」

「安定期過ぎるまで秘密にしていたんだって。」

千秋も興奮していた。

「あはは。社長がつい口を滑らせたんだよ。まだ社員には秘密らしい。」

「……」

「めでたいねぇ。」

「社長嬉しそうだったね。」

「無事に産まれるまで公にしないらしいよ。」

「……そう。」

「奈緒さん!」

「うぅッ…」

奈緒は吐き気をもよおした。

「奈緒飲み過ぎだよぉ。」

「大丈夫?お手洗い借りる?」

「ハァハァ…大丈夫。あの、私、帰るわ。」

「僕、送って行きます。」

「いいの、一人で帰る。」

「純、家わかる?」

「はい。あ、いえ、奈緒さんに聞きながら行きますから。」

「少しどこかで休んでいくといいわ。」

「そうですね。そこの喫茶店で休憩してから行きますから。」

「ごめん。」

「奈緒、私も一緒にいるから。」

「大丈夫だからお願い、…ごめん、一人に、なりたいの。森下さんとデート…千秋も彼と…」

「わかったわかった。」

「純クン大丈夫か?」

「はい、任せてください。」

「なんかあったらメールしてね。」

「はい。」


立ち尽くす二人を中心にして、夏の夜は陽気に回り続けていた。


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