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幸せの欠片
第1章 序章
  主婦の仕事は多いと言えば多いけれど、手を抜こうと思えば、それなりに時間は作れた。

 夫は理解があるというよりも、家事には滅多に口出ししないので、好きなように出来る。
 
 大人二人の家庭で普通に暮らしていれば、掃除も大変ではない。

 その日は、朝から掃除洗濯をして、午後にはデパートへ行くことにした。

 金曜日だし、どうせ帰宅は遅くなると思っていたけれど、夫にも出掛けることは伝えた。

 陶器の展示会を見てみたかったのと、明るい色のスカートが1枚欲しかったからだ。


 クローゼットの中を見ると、秋冬物には黒や茶色が多く、何だか着たいものが見つからない。それだから新しいスカートが欲しくなったのだけれど、選ぶのに手間取って、最終的には、いつものベージュのワンピースに袖を通すまでに時間が掛かってしまった。

 デパートに着いた時には、既に午後3時を回っていたが、比較的空いている時間帯なのか、一階の化粧品売り場を抜けてエレベーターにたどり着くまで、混雑のストレスを感じずに済んだ。

 そのまま最上階へ上がる。
 
 陶器の方は、広告で見て思ったよりも渋めのデザインで、悪くはないのだけれど気持ちが動かず、結局、購入は見送ることにして、さっさと催事場を後にした。

 エレベーターで3階に下りる。

 スカートを買うのは半年振りだけれど、特にサイズが変わったという気はしていなかった。

 なのに・・・・・・。

 9号サイズのスカートのジッパーがきついのだ。

 最初に見つけたお気に入りのデザイナーズブランドのお店では、明るめの茶色地に落ち葉が赤や青色にデフォルメしてプリントされたスカートが素敵だった。

 店員の女性に尋ねても、

「このデザインでは、9号しか展開しておりません」

 と言われ、がっかり。

 次々と別のショップも試してみたが、やはり9号が少しきつく感じられた。

 ― うーん、マズい。

 更衣室の鏡で確認すると、夫から可愛いと褒められたことのある、元からぷっくり出ているお尻だが、今は更に丸みを帯びて見える。

 すっかり購入意欲をなくしてしまい、生活用品の小物を見てから、化粧品売り場を回った後、地下で食材を買って帰宅することにした。

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