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毒蜜喰らわば
第12章 イタコの孫が見通した、愛・・
*
どんよりとした曇り空だったが今のところ雨は降っていない。
土曜の午後の六本木は大勢の人でにぎわっていた。
2週間前、茂と真昼のデートを楽しんだミッドスクエアを通り過ぎて、
静かな裏道を進んでいく。
集合住宅をいくつか通り越すと、しだいに道も狭くなり、
そして目の前に木々の塊が見えてきた。
咲枝と訪れた季節には青葉が密集するように茂っていたが、
秋になり葉が落ち痩せ細ったように見える欅の木の枝が、繊細でもあり寂しげでもある。
鎮守の森の目の前までくると、あの時と同じようにはしゃぐような若い女性達とすれ違う。
きっと手を合わせて良縁を祈願したことですでに達成感を味わっているのかもしれない。
まだどんな恋に出会うのかわからないというのに。
この恋願神社に来たという事だけで心が満たされてしまったのかもしれない。
赤い鳥居が見えてきた。
潜り抜ける人の流れを眺めるようにして、里佳子と進、そして堀内雅斗が私を待っている。
一歩一歩近づきながら大きく深呼吸をして、心の準備をした。