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第13章 別れも幸せも成就

まるで別れを前提にしたような言い方に、茂は少し顔を曇らせた。
だが気持ちを切り替えるようにして息を吐いてから、いつも通りの笑顔を見せてくれた。

「僕も美智と一緒に蛍庭園のベンチでビールを飲んだこと、楽しかったよ。
　いい思い出だ・・」

シャンパングラスの中で踊る細かな泡を見つめたまま、茂は言葉を詰まらせていた。

「楠木さん・・どんな事でもきちんと聞きますから・・遠慮なく話して」

視線を流し言葉を誘導する。
心置きなくすべてを吐き出してほしい。
私の心をふらつかせないように。

わかった、と茂の乾いた声がますます別れの予感を色濃く表しているように聞こえた。

「彼女との・・結婚が決まったんだ。クリスマスには籍を入れて夫婦になる・・
　彼女ね、子どもができたって。もうそろそろ４ヶ月になるんだって」

茂がとうとう恋人と結婚する。
そして彼らの間に子供が生まれてくる・・

言葉を失ったのはショックに打ちのめされたから、ではなく、
驚きの気持ちで心が覆い尽くされたからだ。
恋願神社で別れの決意を誓ったことがさっそく形を成した。
嘘でしょ、こんなにすぐに祈りが現実になるなんて・・