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Ate
第1章 ─月夜と笑み─
 黄金に輝く月が少女を照らした。
少女はビルの屋上に立ち、風に髪を遊ばせていた。
「ねぇ、私は勝ったのよね…?」
 誰にともなく発せられた弱々しい声。
 少女の頬を一筋の涙がつたった。
「幸せになれてないじゃない」
 一歩前に出る。
 先程よりも風が強くなったように感じる。
「こんなはずじゃなかったのに…」
 目を閉じ、もう一歩前に踏み出す。
 足の踏み場はもうない。支えのなくなった体は前方へ倒れ行く。
 胃の持ち上がるような不思議な感覚があった。
 一瞬だけ目を開き世界を眺めた。
 そして何かを呟く。誰にも届かない少女の声。
 白いワンピースと髪を風が遊ぶ。月に照らされた少女の最後の姿。
 その表情は安らかに、どこまでも美しかった。
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