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第7章 卒業生の彼女　坂上依那

　ふと印刷室から、“ピピーピピー“と印刷が終了する音が聞こえ、その音に気を取られ依那の肩においていた彼の右手が離れた。

　依那は、咄嗟に彼の左手が離れていかないように右手を添え力を込めた。

　彼は心臓が大きく震えた。

　結婚して数年、手を重ねることがあっても柔らかな女性の手に重ねられることがなかったからだ。

「先生」依那がぽつりと言葉を漏らした。

「私ね先生の角張った男らしいこの手が板書するところを見るのが大好きだった。生徒でいるときからずっと触ってみたかったの」