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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第29章 果たされぬ・・・約束
エリカを送り届けた俺は

戻った足で…とある場所に向かっていた






言ってなかったんだが

俺が今住んでる場所は




いつか…アイツと




マリアと逃避行して

逃げ延びた…あの町があるのと

同じ県内なんだ



駅の名前は覚えてた

そう近いワケではないけど

行こうと思えば簡単に行ける場所



もちろん初めから知っていたけど

近づく事はなかった…思い出の場所








宿泊したホテルや…商店街

あの時は…祭りやってたっけな?




マリアのやつ…ケータイ持ってねぇのに

ちょこまかどっか行っちまってさ

出店を前にして、やたら喜んで

子どもと一緒になってはしゃいでて




・・・ははっ


参ったモンだぜ?・・・なんて







数日間・・・一緒に暮らした

ウィークリーマンション



公園・・・



スーパー・・・八百屋







少しずつ・・・一歩ずつ




凍ってた自分の心と

向き合うように




俺は足を進めて行った




バイクの後ろにマリアを乗せて

自由に走った道





『・・・』



〃ここ…間違いない〃





ザザー・・・ザザー・・・





俺が最後に訪れたのは…潮の匂いと

波の音のする・・・海岸





思い出の場所




ひとりきりで・・・砂浜を歩いた







途中の花屋で小さなブーケを買って

あの日と同じように海にたむけて

手を合わせた






〃ごめんな・・・約束、守れなくて〃





小さな命に…ひっそりと

謝って、手を合わせる






ザッ…ザッ…ザッ





〃この辺…だったかな〃





砂浜で足を止めて

首から下げてるリングを取り出して

太陽にかざす





『・・・』





俺がひとり…降り立った思い出の場所





二人だけの・・・秘密の誓い





そこには



あの日のまま




マリアと二人きりで誓った約束が・・・






〃果たされぬ約束〃が



置き去りにされたまま…そこにあった
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