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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第16章 瞬間(とき)の・・・悪戯
『ふざけるなよ!?何なんだお前は?!』

『・・・・・・!?』





マリアはさすがに
俺だと気づいている

目を泳がせて動揺していた。





〃早く、逃げろ〃




気づいているし
意味もわかってるだろう




しかし、頬を押さえて
小刻みに震えてる
マリアの脚は中々動かない





『いや~…すんません!
なんかブレーキの調子が・・・ったく
どーなってんだかオンボロが

あ…大丈夫でしたオニーサン?!
あぁっ…やっべぇ~~』








俺はさりげに起き上がり
男の前にしゃがんで

キレイにチャリのタイヤの痕がついて
汚れた男のスーツの裾を
手でペシペシとはらいながら

マリアと男の間に壁を作り
分断した



『……チッ』





マリア・・・

何ボーっとしてんだよ

早く・・・逃げろって







そんな俺に構わず

男はすでに俺など眼中にないというように
俺をはらいのけて

一歩…マリアににじり寄る






くっそ……!








『・・・マリア』


『っ・・・か、返してっ』








男は地面に散乱した
マリアの荷物の側に落ちていた
母子手帳を拾い上げて










・・・ニヤリと笑う












ゾク・・・っとする



なんか、すげぇ不快な

怪しい笑い方







『返して・・・っ』

『・・・』





母子手帳を取り返そうと
せっかくはなれた男に近づき
手を伸ばすマリア…






パラ・・・パラ・・・






俺と同等か…少しデカイくらいか?
そこそこのタッパーのある男が

マリアの手が届かない位置に
持ち上げて
母子手帳をめくる










『やめて・・・返してよっ』








背伸びしても届かないそれを
マリアは必死に取り返そうとしている













『・・・フフッ』










『・・・っ』










男が再び


母子手帳とマリアを見て


ニヤリと笑った。









『マリア・・・でかしたじゃないか』
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