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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第26章 運命は・・・先着順?
電車を降りてホームに立つ俺とマリアは

条件反射のように…どこか赤の他人



あの町で過ごした俺らは
すでにいなかった


それこそ、あれは夢の中の
幻の数日間だったかのように




寂しくも…こっちが俺らにとっての
〃見慣れた景色〃だ



体のもつ〃感覚〃って
なんか恐ろしいよな?



目から耳から入る情報
その景色や空気が



その現実をおのずとわからせるような
ここが…いつもお前たちのいる場所だ、と
言われてるような感覚





『空気・・・やっぱり違うな?』

『ん・・・そうだね』





人の心理的な意味合いもあるが

その土地だったり気持ちの持ちようであったり

俺はマリアのように〃ウマイ空気〃

なんて言葉を覚えてしまってた






少し・・・空気が薄いぜ





なんて思いながら



マリアの手を・・・



引いて歩く事は

もうなかった




ここは・・・あの自由な世界では、ない






『マリア・・・行こ?』

『うん・・・』




染み付いた習性は簡単に甦り

俺とマリアは、どこか他人行儀に

少しはなれて歩く





そんな俺とマリアの現実

そこには…楽しさの余韻なんか

なかったように思う






ここからが現実

ここからが・・・本番




それを俺もマリアも

全身で感じてた…わかっていた




『マリア・・・ほら』



俺はマリアに自分のケータイを
差し出した



『・・・』




マリアは結局
〃旅の中〃では両親に連絡しなかった



終わりまで…最後まで
俺との時間を過ごしてくれていた




それを感じ取ったから
俺も急かしたり、何も言わなかったけどさ





『ありがと・・・あ、でも
ホテルかどこかから、かけるから良いよ』





さすがに…俺のアパートに
一緒に帰る訳にはいかない


ここで…お別れなんだ



だからこそ俺は

わかっていたからこそ心配で



せめてマリアが

両親に連絡をとれてから

見送って別れようと思ってたんだ
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