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花菱落つ
第4章 義信
 凪は信玄に遅れて中曲輪を出ると、躑躅ヶ崎館の西側へ向かった。館の西には、先代信虎が城中守護神として勧請した府中八幡神社があった。凪はそこで巫女として務めながら、義信を探るという任につくことになっていた。

 躑躅ヶ崎館は広大な敷地を持つ平城だった。まず濠(ほり)は外濠、内濠、空濠の三つ。三つの濠に守られた中心にある内郭には信玄の住まう中曲輪とその東に執務を行う東曲輪が隣接していた。また西側には嫡男の義信が妻を迎えた際に建てられた西曲輪がある。それぞれの曲輪は石垣で仕切られていた。決して複雑な作りではないため、城の建て替えを家臣が進言するが、信玄は「人は城 人は石垣 人は堀 なさけは味方 あだは敵なり」と詠って退けたという。いかにも信玄らしい歌だった。

「凪と申します。よろしくお願いいたします」
「お前が千代女様の『ののう』か。話はお館様から聞いている」

 府中八幡の御祭神は誉田別神、媛神、息長帯姫神の三柱。城中の社とはいえ、甲斐国総社として国内の神社統制を担っている社だ。また、武田家氏神として信玄や義信も事あるごとに府中八幡に参拝するので、接触も容易だった。

「お前には境内を清めてもらうことにする。下位の巫女の勤めでもあるが、その方がかえってお前にも都合がよいだろう」
「ありがとうございます」

 社の中でのお勤めでは、義信と接触することが難しくなる。外での勤めを与えられたことに凪は感謝した。そして竹帚を手に、様々な人の行き交う境内を清め始めたのだった。
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