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花菱落つ
第6章 因果応報
 飯富虎昌ら捕縛の知らせは、すぐさま西曲輪の義信の元へもたらされた。義信はそのまま蟄居を申し渡され、勝手に出歩けぬよう、見張りの者がつけられた。

「父上は出陣なされるのか」

 義信を西曲輪に幽閉したまま、信玄は北信濃へ向けて出陣した。石垣の向こうからから鬨(とき)の声が聞こえる。おそらく「三献の儀式」だろう。出陣前に必ず行われる儀式だ。

 「三献の儀式」とは打ち鮑、勝ち栗、昆布を肴に大将が三度酒を飲み干すという儀式で、三度目の杯を干した後、杯を地に打ちつけて割った。その後大将の「エイ エイ」という声に、家臣が「オーッ」と応え、士気を奮い立たせ出陣するのだ。

 やがて軍勢が出陣すると、躑躅ヶ崎館には静けさだけが残された――。
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