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花菱落つ
第6章 因果応報
「いいえ。義信様が『ののう』の私を厭い遠ざけるというのであれば信濃へ帰りますが、私はこれまで通り、ここで義信様を探る任を探る果たしとうございます」 
「本人を前にそれを言うか。わかった、好きにいたせ。二度とお前にあのような無体なことはしない。しかし惜しいな。もし、女であったならば側室にもできようものを」

 この美貌、この心映え。
 男であるのが惜しまれる。

「ご勘弁を。ご正室様がお悲しみになります。それに私が女であれば、今頃は武藤喜兵衛様の妻となっておりましょう」

 不思議そうに首を傾げた義信に、凪は喜兵衛との顛末を語った。
 知らぬこととは言え、まさか男に求婚とは。上には上がいた。

「お召し物、社までお借りいたしてもよろしいでしょうか」
「もちろんだ。新しい巫女装束も手配しよう。だが今宵はもう遅い。何もせぬゆえ、ここに泊まってゆくがいい」
「ありがとうございます」

 こうして凪は義信と一晩を共にしたのだが、言葉通り義信は凪に一切触れようとはしなかった。
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