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堕天使 1st gig.
第8章 過去
そしてその頃から、親父は毎晩のように出かけるようになっていた。はっきりした事はわからないが親父は戦争反対の為のグループに所属していたらしい。

時々、テレビのニュースを見ながら親父は

『歴史をちゃんと学べば、こんな事をしようなんて誰も思わないはずなのに…。』

と嘆いていた。

ある晩、親父がいつものように出かける時、俺はなんとなく親父に

『いってらっしゃい。』

と声をかけていた。親父は突然俺を抱きしめてから

『父さんはお前達の命を絶対に無駄にはさせない。お前と生まれて来る妹の命は国の為のものじゃない。お前の命はお前自身のものだとお前はちゃんと覚えておきなさい。父さんはその為に戦っているんだから。』

と言っていた。俺には全く親父の言葉がわからないまま逃げるように自分の部屋に行っていた。

しばらくして梅雨が始まっていた。その日も朝から雨だった。病院に行かなければならないお袋が雨で大変だからと親父が学校に行く前にお袋を病院に送ると朝飯の時に言っていた。

久しぶりに3人で家を出た。親父は雨の中、俺の頭を小さい子のように撫でながら

『気をつけて行きなさい。』

と言って来る。俺はやっぱり照れくさくて親父の手から逃げるように学校へ向かっていた。今日は早く学校が終わる日だった。

雨だから、俺は面倒くさくて家には帰らずに学校帰りのまま、悪友達と親が仕事で居ない奴の家に集まってゲームをしたりオヤツを食べたりして遊んでいた。

雨のせいでずっと薄暗いから、夕方とか時間がわからず、俺が家に帰る頃にはすっかり暗くなっていた。

俺は恐る恐ると玄関を開けていた。絶対にお袋から

『遊ぶのは宿題を済ませてからって言ってるでしょ!大体、今、何時だと思ってるの!?』

とどやしつけられるとか思っていた。だが、俺の予想に反して家の中は真っ暗で、お袋の姿はどこにもなかった。

病院で何かあったのかもしれない。それならすぐに親父が帰って来て俺に教えてくれるはずだ。俺はそう思って部屋の隅に座っていた。

しかし、俺の期待に背き、何時間経っても誰も帰っては来なかった。俺は腹を空かせ暗闇の中で1人でこの苦痛に耐えていた。

ただひたすら親父達を待ち続け、時間の感覚も何も感じずに、俺の耳に雨の音だけがずっと聞こえていた。
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