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堕天使 1st gig.
第8章 過去
俺が気付かない間に朝になっていた。警察と児童保護とかいう人間に独りきりで家の部屋の片隅でうずくまっていた俺は発見されていた。

児童保護の奴に俺は施設に連れて行かれ

『君のご両親がテロの被害で車ごと爆破されたんだ。もうご両親は帰って来ないし、君のお母さんには親戚が居ない。君のお父さんの親戚は君を引き取る事は出来ないと拒否したから君は今日から国の子になるんだ。』

といきなり第2の人生を押し付けられていた。馬鹿な俺は雨の中、何度も施設を抜け出しては家に帰ろうと試みた。だが子供の足では家に辿り着く事はなく、すぐに捕まり、施設の職員達に殴られた。

俺はヤケクソのまま高校までを施設で暮らし、国に育てられた子として軍に志願していた。その時の俺は施設から抜け出せるならなんでも良かった。

まともに飯が食えるのなら、それだけで俺は満足する人間になっていた。

俺は軍に入ってから親父達の事を調べてみた。その日は雨で病院までの道は渋滞していた。そこへ爆発物を積んだ軽トラックが突っ込み

『これは聖戦である。神の為に死ぬが良い。』

と自分勝手な事をほざいたテロが軽トラックに積んだ爆発物を起爆させた。20台以上の車が爆発に巻き込まれ、その中に妊娠中で逃げ遅れたお袋と親父が居た。

死体はとてもじゃないが子供の俺に見せられる状況ではなく、最後まで両親を見ていない俺は両親が死んだ実感を持たないまま、まだ帰って来るかもと心のどこかにそれを残し続けていた。

お袋は大学時代に両親が亡くなっていたから身寄りはなかった。親父には妹夫婦が居たが、妹夫婦は姑、つまり親父の母親で俺の祖母と暮らしており、姑は俺のお袋とは折り合いが悪かった為、今の貧困時代に子供を引き取るのはお断りだと俺を施設に送ったんだと俺は理解した。

家族なんか居ない。俺には誰も居ないと悟った俺はいつ死んでも構わないという感情を抱いたまま今までを生きて来た。

『だから俺は雨が嫌いなんだ…。』

そう俺はリナに言っていた。俺はずっと黙って静かだったリナはもう眠っているのかもしれないと思っていた。

だけどリナは俺に抱かれ、目を閉じたまま

『アルトは帰って来なかったお父さんを憎んで軍人になったの?』

と静かに聞いて来た。
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