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堕天使 1st gig.
第32章 防衛
羽賀はそれ以上は何も言わなくなり、俺は一通りを確認して本部の方へ戻っていた。羽賀も俺と戻り不機嫌なまま本部のテントに入っていた。

羽賀と入れ替わりにテントから出て来た宗司が

『まさかの姫の指揮とは…。』

と言った瞬間、俺はやっと羽賀の事を思い出していた。

『あの「じゃじゃ馬姫」か!?』

そう言った俺に宗司は

『今更ですか?』

と俺の人に対する物覚えの悪さに呆れていた。羽賀 美姫防衛隊長こと「じゃじゃ馬姫」。羽賀も大戦時はかなりの有名人であったのは間違いない話しであり、羽賀は俺の1つ上、つまり大戦を俺より1年先に参戦しており、しかも当時は五十嵐の副官をしていた女だった。

「じゃじゃ馬姫」を唯一手懐けた男として五十嵐にも「じゃじゃ馬慣らし」とあだ名がついていたが、俺が五十嵐の隊に配属になるのと入れ替わりに羽賀は防衛隊長に移動になっており、五十嵐はずっと「じゃじゃ馬慣らし」については語ろうとしなかった為、俺には関係がない人間として羽賀はインプットされていた。

羽賀には他に「鉄壁の女王」などのあだ名もあり、大戦時の噂では羽賀が率いる小隊だけで一個師団を退けたなどの本当かどうかわからない噂が絶たない女だった。

とにかく俺と同じで羽賀の上官を嫌がる奴は多かったらしいが、部下に関しては熱狂的な羽賀信者が多く、羽賀の為ならと生命をかける奴が絶えないという噂もあったくらいの女隊長だった。

その羽賀が対テロの2課の隊長のポジションが欲しいとか俺としては意味がわからないままだった。

目的は五十嵐か?

なら、小雪の為にも尚更俺はこのポジションを譲る訳にはいかないと俺は意地になっていた。

中隊が用意した仮設本部ではなく、俺は装甲車にαの隊員とβとγの分隊長を呼ぶように宗司に指示を出していた。

今はもう世間じゃ昼休みという頃だ。人質に残された猶予は後19時間。

そこから2時間に及ぶ打ち合わせをしてから宗司は俺が手配しろと指示した作業に入り、俺は隊員達に交代での食事や仮眠の指示も出していた。
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