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第34章 信用

３日目には美優の熱は下がり、結局、俺１人が狼狽えただけで終わっていた。そんな状況はあったものの仕事はやはり平穏なまま、そろそろ師走と言われる時期に突入していた。

今年のリナのクリスマスプレゼントのリクエストは何故か掃除機というリクエストだった。俺が

『掃除機が必要ならそれはそれで買ってやるから、他にないのか？』

と言うとリナは

『だって五十嵐さんのお勧めなんだけど、これが結構いい値段するんだもん。』

と言っていた。五十嵐は電化製品マニアだった。そもそも五十嵐は雄太と同じ独身寮に住んでいた。五十嵐が大学を卒業する年に五十嵐は父親を亡くし、母親の為に軍に志願したのだが、大戦が終わった年にやはり母親も亡くしていた。

その為、五十嵐は独身寮だったはずなのだが、電化製品マニアの五十嵐は部屋に３台のパソコンを置き、テレビや冷蔵庫などの五十嵐こだわり家電を設置し、毎日のように独身寮のブレイカーを落とすという騒ぎを起こしていた。

五十嵐は

『軟弱なブレイカーはお断りだ。』

と基地の近くに一軒家を買い、ブレイカーを自分好みに作り替え、家電を自分好みに設置するという家電屋敷を作り上げてしまったのだった。

リナが小雪から聞いた話しでは五十嵐の家の電気代は俺の家の５倍は請求されているという状況で、それでも五十嵐のこだわりはまだまだ続いているという状況だった。

その五十嵐こだわりの掃除機が普通の掃除機の３倍の値段だとリナが言い、うちの掃除機がそろそろ寿命だからクリスマスプレゼントに買い替えてくれとリナが希望したのだった。

『とりあえず掃除機な。美優はどうするんだ？』

と聞いた俺にリナは笑いながら

『リンゴジュースかな？』

と言っていた。美優は呑気に

『あーい！』

と返事をするから俺はクリスマスは掃除機とリンゴジュースを買いに行くのかと笑うしかなかった。

そのくらい平和だった俺にある朝宗司が

『ちょっと見て頂きたいものがあるのです。』

といつもとは違う表情で俺に言って来ていた。俺はただその宗司の表情を知っていると感じ、嫌な予感がするとだけ感じるだけだった。