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堕天使 1st gig.
第34章 信用
その怪しい表情の宗司が俺に差し出して来たのはまずは携帯タブレットだった。その画面には

事故か、自殺か、他殺か!?

という三流新聞記事の見出しが載っており、内容は国のある研究施設の元職員の死体が昨日、ある湖から車ごと発見されたという記事だった。

遺体の損傷や車の状況から死後約3年が経過しているというくらいで、他に大した内容はなく現在警察が事故、自殺、他殺のあらゆる方面で捜査中とだけなっていた。俺はとにかく嫌な予感がすると思いながら宗司に

『これが?』

と聞いていた。宗司はゆっくりと息を吐き

『2度と話さない約束でしたが、夕べ、この件で父から連絡が来たもので…。』

と俺に言って来た。

やはりか…

と俺は感じていた。宗司がそういう表情をしたのは2年前の夏に俺に怪しげな実験の写真を見せた時以来だった。

『親父さんはなんだって?』

『例の実験の代表科学者が彼だとだけです。』

そう言って宗司は黙ってしまっていた。この話しは2度としない約束だった。リナには今は美優も居て、今更、リナの過去かもしれないという曖昧な話しをほじくり返しても意味があるのかという状況に宗司は完全に黙ってしまっていた。

つまり、俺に決めろって事だ…

俺がこのままこの話しに興味がないと言い切ってしまえば、宗司はまたこの話しをなかった事にして多分今まで通りに変わらない涼し気な顔でこの先やっていくはずだ。

だけど…

だけど、俺は怖かった。リナが普通の人間で普通の女だとは思っていても、もしかしたら何かあるんじゃないかと常に恐怖を抱いていた。

それは娘の美優に対しても同じ事で、この前のようにたかが発疹熱だと言われても、俺は狼狽えてパニックになりそうなくらいリナと美優の体調に関して神経質になっていた。

この先の為に俺はこの件を調べるべきなのか?

そう考えながら俺は宗司に

『もし俺が知りたいと言えば、お前は協力してくれるのか?』

と確認していた。宗司は

『それが責任だと僕は思っています。ただ、貴方がこれ以上は嫌だと判断された時は僕は再びこの話しを封印するだけです。』

と答えていた。俺はこの日、1日中、その事だけを考え、仕事は全く手に付かないままリナと美優の事を考え続けるだけしか出来なかった。
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