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堕天使 1st gig.
第35章 嘘
家ではご機嫌のリナとご機嫌の美優が俺の帰りを待っていて、リナが美優を抱っこして

『美優は初めてのクリスマスだから楽しみだね。』

と言っていた。そうやって平和な家族を眺めながらやはり俺は

知っておくべき事は知るべきで、知る必要がない事は忘れてしまえば良いだけだ…、それが家族を守る事に繋がるならこのまま知らないままには出来ない事だ…

と考えるだけだった。

翌日、宗司に

『とりあえずは調べてみよう。』

と言っていた。宗司は

『わかりました。』

と穏やかな顔になっていた。

だが、いざ調べてみるとわかった事だが、そもそも捜査権のない軍であり、そういう情報集めが得意ではない軍人の俺と宗司は亡くなった科学者の名前くらいしか調べる事が出来ない状況だった。

市ノ瀬 真一…、死亡当時はもう50歳、国が運営する研究施設の元研究員…

後はさっぱりわからないまま、午前中は宗司と2人で

『うーん…。』

となるだけだった。そもそも、どこから調べてよいやらすらわからない。警察の記録も捜査中になっており、俺達軍人はマスコミ発表用の情報くらいしかわからない。宗司が

『五十嵐隊長なら…。』

とボヤいていた。

確かに五十嵐なら俺達以上の情報集めが出来る人間だ。だが、それはリナの事を他人に説明する事を意味する為に俺も宗司も避けて来た道だった。

俺は宗司に

『会議室に五十嵐さんを呼んで来てくれるか?』

と言っていた。正直、五十嵐に話すべきかどうか俺はまだ迷っていた。五十嵐が宗司と来て会議室の鍵を開ける間も、宗司が五十嵐と俺の為にコーヒーを入れる間も俺はひたすら

五十嵐に話すべきなのか?

と往生際悪く考えてしまうだけだった。五十嵐は多分俺が話し易いようにと

『昼休みに食堂じゃなく、こんな所に呼び出すとかお前さんはそんなに俺と会いたかったのか?』

とふざけていた。だが俺は五十嵐のおふざけに付き合う余裕もなく、ただ黙り込んだままだった。

さすがに状況が深刻だと五十嵐は受け取ったらしく

『俺は小雪と付き合う時にお前さんらを家族と考えると決めたはずだが、どうやらお前さん達の方は違うみたいだな。』

と苦いコーヒーをそのまま苦いという顔をして言って来た。
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