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堕天使 1st gig.
第36章 未来へ
市ノ瀬は理菜の為に政府の実験を利用したのだ。だからクローンの生成に理菜の遺伝子を使ったのだと俺は思った。理菜のクローンで実験すれば、その実験データの全てが理菜にそのまま利用出来るからだ。

だが、クローン被検体は全て死亡した。いや、市ノ瀬は最後に理菜にはクローンとは違い魂が残っていると記していた。

そこに全てを市ノ瀬はかけていたんだと俺は思ってから寒気がしていた。

人として親として、確かに娘を失うとか絶対に認めたくない気持ちは理解出来る。俺だってリナを失い、美優も失う事になれば正気で居られる自信がない。

だが、だからと言って自分の娘を実験しようなどという狂った考えは到底認められる事じゃない。

しかも自分の娘の時間を止めるとか、有り得ない事を続ける市ノ瀬が俺は信じられないとしか思えなかった。

政府の実験失敗の後から市ノ瀬は本格的な理菜の蘇生を始めていた。

「理菜の脳は完全に回復した。身体も完全に元通りだ。クローンのような細胞劣化は全くなく、理菜はあの日のまま眠り続けているようにしか見えない。」

「まずは理菜の脳のフォーマットからだ。理菜の残った電気信号の流れを止めている何かをフォーマットで削除すれば、電気信号が再び脳内で活動を始め、自然に理菜は蘇生される。」

そうやって市ノ瀬はゆっくりと確実に理菜の蘇生実験を進めていた。

「やはり私は正しかった。理菜の脳は再び活動を始めてくれた。自立機能が回復するまではただ理菜の時間を止めていればいいだけだ。」

「理菜の脳波に反応が見られた。私が理菜と呼びかけると理菜の脳は私を覚えているようにちゃんと反応を示している。私の可愛い理菜が私の元に帰って来るのはもうすぐだ。」

と俺がリナと出会う半年くらい前がこんな感じだった。

一体、リナは何年の時を市ノ瀬に止められていたのだろう…

本来のリナは明らかに俺よりも年上の大人の女なのだと俺はぼんやりと考えていた。

そして、俺とリナが出会う一週間ほど前の部分で俺はまた吐き気を感じ目眩がしそうになっていた。
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