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堕天使 1st gig.
第36章 未来へ
だが俺が躊躇って迷っていても仕方がなく、俺は息を呑んでから日記を先に進めていた。

「理菜をあの医者から取り返す事が出来た。まずは理菜の脳を調べたが理菜の脳は確かに活動を停止したが脳の中にはまだ一部の電気信号は残っている。理菜の生命はまだちゃんと残っているのだと私は確信している。」

これは市ノ瀬 理菜の死亡した日の日記だった。表向き市ノ瀬は理菜を死亡させて自分の家、もしくは研究室のような所に連れて帰ったんだという事が俺にはわかった。

「まずは治療の前に理菜をこの世界に留めなくてはならないと私は考えた。このままでは理菜までもがマリアのところへと行ってしまう。大丈夫、マリアの時は失敗したがその時のデータがある限り、私はもう失敗などしないのだから。」

「理菜の脳内の信号が安定した。まだ微弱ではあるが身体と脳の損傷を修復してやれば、ある種の刺激で理菜の脳は再び活動を再開するはずだ。だが、それにはいくつかの実験が必要だから、今は理菜の時間を止めなければならない。大丈夫、次に理菜が目覚めた時はいつもと変わらない理菜が目を覚ますだけなのだから。」

マリアにも同じような実験をした…、そして自分の娘である理菜にまで実験を始めた市ノ瀬だった。

吐きそうだ…

正直、出来の悪い俺の頭ではこの市ノ瀬にそういう拒否反応しか出なかった。宗司が少し心配そうに

『大丈夫ですか?』

と聞いて来た。俺は

『大丈夫だ。コーヒーをくれるか?』

とだけ答えていた。宗司が黙って俺の前にコーヒーを置き、俺は日記の続きを読んでいた。

しばらくは実験らしい実験の事は書かれてはいなかった。ただ

「理菜はあの日のままだ。やはり私は間違ってはいなかった。後は必要なデータさえ手に入れる事が出来れば理菜の時間をまた戻してやれるのに…。」

と1年近く、市ノ瀬は理菜をそうやって無理矢理に生かし続けた事、その為に国の研究施設を辞めた事などがわかって来た。

その状況が2年も続き

「政府の特別プロジェクトの依頼が私に来た。これは神が私に与えたチャンスなのだ。政府の実験なんかどうでもいいが理菜を救う為には必要な実験だ。」

と政府の特殊実験の話しが始まっていた。
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