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堕天使 1st gig.
第4章 苛立ち
俺よりも先に来て走っているのに俺が走り終わった今も大地は走り続けている。まだ自分の中にゴールがない大地なんだと俺はしばらく走る大地を眺めていた。

しばらくして、さすがに体力の限界になった大地が俺の前までやって来た。息切れをしながら大地が俺に

『お聞きしてよろしいでしょうか?』

と言って来た。俺は普通に大地に

『楽にしろ。』

と言ってやる。訓練兵であっても軍人は軍人だ。大地の立場が今は上等兵という階級である以上、上官である俺に礼を尽くす必要がある。

何階級も上にあたる上官に対する会話を切り出す大地は緊張した顔で

『教官は実戦では何を感じて何を考えましたか?』

と俺に聞いて来た。階級にうるさい上官なら大地のこの個人的な質問はお前が知る必要はないと怒鳴りつけられて終わってしまう。だが俺は軍人としてははみ出し者だ。なるほど…、だから今の大地にはまだゴールがないのか…、と俺はひたすら走り続けた大地にそう思っていた。

訓練をいくらトップでクリアしても実戦の実感が湧かないから、実戦に備える為の訓練を止める事が出来なくなっている大地に俺は

『何も感じない。ただ生きて帰る事だけを考える。生きて帰るには疲れ切ってたら帰れない。』

と教えてやる。大地は俺の答えに少し驚いた顔をして

『そうですね。確かにそうです。』

と息を吐き出し、身体の力が抜けたように座り込んでいた。俺は大地に

『なんでわざわざ戒厳令中にまで自主トレしようと思ったんだ?』

と聞いてみた。大地は頭を掻き少し照れたように

『自分は教官と同じ訓練学校の出身です。施設上がりでずっと荒れてた自分はやはり訓練学校でも荒れてて…、そんな時にある教官から赤羽教官の話しを聞いたんです。』

と言い出した。俺は大地に

『それで?』

と話しを促していた。大地は笑って

『赤羽教官は俺と同じ境遇でもストイックに完璧にやる人だと聞きました。だから教官が今の俺の目標で憧れなんです。』

と答えて来た。誰だよ…、そんな変な事を真面目な訓練兵に教えた馬鹿な教官は?大地の答えを俺はそんな風に考えていた。
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