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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?
「チ、チハルさん……?」


 まだあどけない顔を震わせ、俊太は率直に怯えを示すしかなかった。

 だがその時はチハルさんも、すぐにハッと我に返っている。


「ご、ごめんね……私、なんでこんなことを……」


 肩を掴んだ手を緩め、チハルさん瞳を大きく潤ませていた。

 父親とうまくいってないことは、子供の俊太にもなんとなく伝わっていたから。きっと少しナーバスになっていただけ、そう考え直すことにして――だから。


「わかったから……気にしなくてもいいよ」


 まだ、俊太はすぐに笑い返すことができた。

 そして、チハルさんは――


「ありがとう……俊ちゃん」


 そう言うと、俊太のことをギュッと強く抱きしめた。


「……」


 女の人の身体。その柔らかさと、そこはかとなく甘いような香りを、その時に初めて実感した。同時にどこか胸が熱くなるのを感じて、俊太はチハルさんを守りたいと思う、そんな自分の気持ちに気がついていた。

 憧れ。初恋――に似た、なにか――それとも? その気持ちの正体が、どういったものか、まだわからなかったけれど――。


「大丈夫だよ。チハルさん」


 俊太は、その身体を抱き返していた。チハルさんが弱々しく感じて、それを守りたいと思ったから。しかし――


「俊ちゃんは、優しいのね……」


 その時の想いがあるからこそ、後になって俊太はもっと苦しむことになるのだ――。

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