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【Onlooker】~サラが見たもの~
第9章 委ねられる、人生?

 それからも俊太は、ヒステリックなチハルさんの姿を度々見ることになった。父親が家を空ける時間が増えるにつれ、それに比例するように徐々に情緒不安定な時が多くなった。

 悪いのは、父親。結婚したくせに、チハルさんのことをほったらかしにしてる。そんな勝手な振る舞いのせいで、目に見えて精神を病んでゆくチハルさんが可哀相だと感じた。

 だから、支えようとする。まだ子供の自分になにができるのかなんて、わからないけれど。どん底にあった自分に手を差し伸べてくれた。それが、チハルさんなのだから。

 俊太は、そう思うことに迷いはなかった。

 そして何度か豹変するチハルさんの様子を見続ける内に、彼女がどんなことで“ストレス”を覚えるのか、そんなことが少しずつわかるようになっていた。


「俊ちゃん。テレビでも観る?」


 例えば、ある日の夕食時。食卓でチハルさんと食事をしている時に、そんな風に訊かれた場合。


「そうだね……」


 俊太は応えている。この時に「見ない」とは言ってはいけない。もし言った時は、代わりに“なにをするか”を明確に決めてあげなければいけなくなるから。その方が、後々面倒になることが多かった。

 しかし――


「なぁにを、観ようかなぁ――」


 チハルさんはリモコンを片手にチャンネルを目が回りそうなくらい代え続けてしまうから、どの番組を観るのか――それも俊太が決めてあげなければならない。

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