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隷吏たちのるつぼ
第3章  第二章 遅れた服罪
 物心ついた時には、周囲が兄姉と同等に「篭山の子」として扱いつつも、心の中で見下している空気を子供ながらに感じ取っていた。特に長兄が、容姿のみならず頭脳においても地域でズバ抜けていたから、同じ英才教育を受けているはずの征四郎は、つねに失望と軽侮を向けられてきた。

 兄姉が備えた、しかし征四郎は備えていない気品。
 そして目の前に転がる若い女は、篭山一族以上に備えているように見えた。

 姉たちには、篭山の娘としての矜持とともに、経営の世界で商売敵たちと渡り合っていくためのしたたかさもある。だが智咲からは、卑俗に立ち向かえるような手強さが感じられない。醇朴な頼りなさに裏打ちされた、愛らしさだけだ。

「おおぅ……」

 蒸れるほどの熱を帯びた牡茎が苦しげに震えた。征四郎は逸やる手でベルトを外し、スラックスもブリーフも脱ぎ捨てた。

 無防備に横たわる智咲を背景にして、傘をいっぱいに開いた先端からは夥しい先走りが漏れていた。湯気が見えそうだ。

 異性を意識するようになったのは早かった。
 小学四年生の時に名古屋から転校してきた初恋相手は、精通を迎えるや、毎日行う自慰の妄想の種となった。

 その子へ近づきたいがために、クラス委員へ立候補したが、あえなく落選した。女子からの票は一票も入らなかった。
 どうやら単独推薦で委員に決まったあの子は、征四郎と二人で務めるのが嫌で、女子たちに協力を仰いで対抗の男に票が集まるよう頼み回っていたらしかった。結果的に、征四郎に与したのは普段お菓子やゲームを買ってやっていた奴らだけだった。

 そんなことが続くと、中学になる頃には、人間は金で動かすしかないと確信していた。

 人一倍強い性欲の逃し先がなく、コンビニ前でたむろしていたヤンキーへ近づいて、リーダーと思しき男に金を渡した。彼女とセックスをさせてもらうためだった。

 彼氏に売られた女は、最初、征四郎を見て猛然と嫌がったが、差し出す一万円札の枚数を増やすと足を開いた。錆びたような金髪に、趣味の悪い化粧。初恋の子には及ぶべくもなかったが、肉茎を股の中心へ突っ込んだ時の心地よさはたまらなかった。
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