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鬼ヶ瀬塚村
第1章 起承転結"起"
『えッ!?お母さんが倒れた!?』

真理子さんが僕の背後で大きな声を上げた。
実家がある田舎からの電話に彼女はもう1時間以上は立ちっぱなしで話している。

どうやら真理子さんのお母さんが病気らしく、親戚が真理子さんを呼んでいるようだった。

しきりに
『でも…』
『けど…』
『仕事が…』
と対応している。

何を言っているかはわからないが、電話越しに年配らしき女性の声が聞こえていた。
しかし、真理子さんの声色で女性が何を言っているかはだいたい想像がついた。
"一度帰省しなさい"

"でも…仕事が…"

僕は真理子さんが長電話を嫌う理由も知っている。
なのにかれこれ1時間以上経過しているわけだ。
余程帰りたくないのだろう。
真理子さんがしきりに実家に行く事を拒む理由は2つあるのだから。
真理子さんは僕より1歳年上の31歳で僕の恋人だ。
大学時代の漫画研究部サークルで知り合って以来だから、もうかれこれ12年は関わりがある。

僕が"真理子さん"と呼ぶ理由もまた2つある。

………

『はぁ…わかったわ』

真理子さんが心底不快そうに溜め息をついた。
そして、どうやら実家に帰省する事に同意したらしい。
ガチャッと半ば力を込めて受話器を置く真理子さん。

僕は目の前のテレビ画面をぼんやり眺めながら
『休暇取れるでしょ?』
と、背中で真理子さんに尋ねた。

真理子さんはベランダに向かう為、一度テレビと僕の間を横断した。
そしてベランダの小さなテラスにあるサイドテーブルに寄りかかり煙草を取り出した。

シュボッと軽快な音をたてて金属製のライターが一瞬闇夜の中、彼女の能面のように蒼白い顔を浮かばせた。

真理子さんは苛立ちと動揺が混じったトーンの声で4秒5秒ほどして答えた。

『ノブと違って、私は忙しいから休暇は貰えないわよ、実家に仕事を持ち込む他ないわね』

通話の余韻か少し聞き慣れない訛りの残る声だった。
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