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鬼ヶ瀬塚村
第34章 5人のマタギ
弘子さんの部屋の前で僕は少し息を整えてから声を上げた。
『弘子さん、お休み中にすみません。信人です。入っても良いでしょうか』
少し衣擦れの音がした後、小さく声が聞こえた。
『どうぞ、お入りなさい』
僕はゆっくりとふすまを開いた。
抹茶と和紙と墨特有の香り、そして新緑のような香りを漂わせるお香の香り、それらが優しく僕の鼻の中を刺激した。
『やぁねぇ、あなたから来てくれるならもっと洒落た浴衣を着て待っていたのに…今日のはあまり好きじゃ無いのよ、私はね竹の柄の浴衣が好きなのよ』
弘子さんは"ふふふ"と笑い、姿勢を正す。
横になっていたのだろうか、彼女の背後にはよれた掛け布団が見えた。
『すみません…』
『いいのよ、さぁお座りなさい。生憎脚が痛むのよ、ご自分で座布団を敷いて頂けるかしら?』
『あ…はい…』
僕は机の前に座る弘子さんに対面するような形で座布団を敷き、そこに正座した。
前に来た時には見えなかったが、足の短いその机の上には不思議と魅力的な物が沢山並べられていた。
砂時計、蝶の標本、大きな巻き貝、松ぼっくり、サイコロに鈴…何の意味があるのだろう?
『弘子さん、お休み中にすみません。信人です。入っても良いでしょうか』
少し衣擦れの音がした後、小さく声が聞こえた。
『どうぞ、お入りなさい』
僕はゆっくりとふすまを開いた。
抹茶と和紙と墨特有の香り、そして新緑のような香りを漂わせるお香の香り、それらが優しく僕の鼻の中を刺激した。
『やぁねぇ、あなたから来てくれるならもっと洒落た浴衣を着て待っていたのに…今日のはあまり好きじゃ無いのよ、私はね竹の柄の浴衣が好きなのよ』
弘子さんは"ふふふ"と笑い、姿勢を正す。
横になっていたのだろうか、彼女の背後にはよれた掛け布団が見えた。
『すみません…』
『いいのよ、さぁお座りなさい。生憎脚が痛むのよ、ご自分で座布団を敷いて頂けるかしら?』
『あ…はい…』
僕は机の前に座る弘子さんに対面するような形で座布団を敷き、そこに正座した。
前に来た時には見えなかったが、足の短いその机の上には不思議と魅力的な物が沢山並べられていた。
砂時計、蝶の標本、大きな巻き貝、松ぼっくり、サイコロに鈴…何の意味があるのだろう?