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ヒロイン三国ファンタジー
第17章 17 新しい時代
「それで私からの贈り物はいつも受け取ってもらえないのですね。詩は聞いてくださるのに」
「……」
「今でもその方を愛しているのですか?」
「愛、などというものでは……」
愛していたのかどうか当人の甄氏にはわからなかった。ただわかるのは今、誰も愛していないという事だけ。
「私の愛を受け入れてもらえないでしょうか」
ぐいっと甄氏の手首を曹植は持ち、自身の身体に引き寄せる。
「な、なりません」
「どうして、抵抗なさるのです? 袁煕殿にも兄上にもそのような拒否をなさったことはないでしょう」
「だ、だめです。お立場が、あなたのお立場が」
「立場などどうでもよいのです。もしあなたを得られるのであれば庶民に落とされてもよい」
「は、離して」
少年のような容貌でも曹植はやはり男なのだ。
力強く、引き寄せられた腕の中は逞しい。初めて感じる眩暈のような熱情が甄氏の中に駆け巡る。
口づけを交わすまで、もうわずかという時にスルっと翡翠のかんざしが髪から落ちてころりと転がった。
「あっ」
さっと横にそれ、唇をかすかにかするだけの口づけは、使用人の声と共に終わりを告げる。
「もう、お帰りください」
伏し目がちな甄氏に曹植は強い瞳を見せ「また来ます」と力強い足取りで立ち去った。
その夜、甄氏は胸の疼きと幼き日の恋、曹植の顔を目に浮かべた。そして息子の曹叡の事も。
若者たちの未来はこれからどうなるのであろうか。力強く逞しく生き抜いてくれるであろうか。
自身が彼らの妨げになることだけは避けねばならぬと、翡翠のかんざしを静かに見つめ、喉を突いた。
甄氏の願いも虚しくやがて曹植は文帝により迫害され、各地を流転する身となる。皇族としての身分を保証されてはいるが政に関わることは出来なかった。
しかし甄氏の死は彼の詩の才を更に高めさせた。
甄氏の死に郭氏はほくそ笑み、何食わぬ顔で皇后におさまる。しかし文帝の跡を継ぐのは甄氏の息子、曹叡元仲であった。
「……」
「今でもその方を愛しているのですか?」
「愛、などというものでは……」
愛していたのかどうか当人の甄氏にはわからなかった。ただわかるのは今、誰も愛していないという事だけ。
「私の愛を受け入れてもらえないでしょうか」
ぐいっと甄氏の手首を曹植は持ち、自身の身体に引き寄せる。
「な、なりません」
「どうして、抵抗なさるのです? 袁煕殿にも兄上にもそのような拒否をなさったことはないでしょう」
「だ、だめです。お立場が、あなたのお立場が」
「立場などどうでもよいのです。もしあなたを得られるのであれば庶民に落とされてもよい」
「は、離して」
少年のような容貌でも曹植はやはり男なのだ。
力強く、引き寄せられた腕の中は逞しい。初めて感じる眩暈のような熱情が甄氏の中に駆け巡る。
口づけを交わすまで、もうわずかという時にスルっと翡翠のかんざしが髪から落ちてころりと転がった。
「あっ」
さっと横にそれ、唇をかすかにかするだけの口づけは、使用人の声と共に終わりを告げる。
「もう、お帰りください」
伏し目がちな甄氏に曹植は強い瞳を見せ「また来ます」と力強い足取りで立ち去った。
その夜、甄氏は胸の疼きと幼き日の恋、曹植の顔を目に浮かべた。そして息子の曹叡の事も。
若者たちの未来はこれからどうなるのであろうか。力強く逞しく生き抜いてくれるであろうか。
自身が彼らの妨げになることだけは避けねばならぬと、翡翠のかんざしを静かに見つめ、喉を突いた。
甄氏の願いも虚しくやがて曹植は文帝により迫害され、各地を流転する身となる。皇族としての身分を保証されてはいるが政に関わることは出来なかった。
しかし甄氏の死は彼の詩の才を更に高めさせた。
甄氏の死に郭氏はほくそ笑み、何食わぬ顔で皇后におさまる。しかし文帝の跡を継ぐのは甄氏の息子、曹叡元仲であった。