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あなたの胸の中で眠る花
第5章 ♦︎曖昧な恋心*
夕飯を食べ終え、部屋でゆっくり過ごす。
明日、帰りたくねーな。
寝巻きに着替えて戻ってきた心が、ベッドで横になる。俺はその横でベッドの脇に寄りかかりながらスマホでゲームをしている。
「ごめんな?休みちゃんと合わせればよかったな。そしたら、どっか出かけられたのに」
「大丈夫だよ、来てくれただけで嬉しい」
あ、ゲームオーバーした。くそ。
「次は…いつ来れるの?」
「んー…まだわかんねぇ」
「そっか…忙しいもんね、真ちゃん」
「まぁな」
「大学、楽しい?」
「楽しいよ」
「私も行けばよかったかなぁ」
「心は勉強嫌いだろ、ついてけねーよ?」
「そうだけど…」
「なんだよ、二年会いに来なかっただけでそんなに寂しかったのかー?」
俺が冗談っぽく言うと、心は静かに呟いた。
「………寂しかったよ」
え?
心の方へ振り向くと、心はうつ伏せになって怒ったような拗ねた表情をしていた。珍しく素直だな。
「そんな寂しいなら、昔みたいに一緒に寝るか?」
また冗談のつもりで言ってしまった。
「……いいよ?」
心は俺をまっすぐ見ながら甘えるように言った。その瞳は微かに潤んでいる気がした。
まじで言ってんのか。予想外の答えに動きが止まる。
「真ちゃん、照れてる?」
「は、照れてねーよ」
半ばムキになって、ベッドに入る。こんな狭いシングルベッド、十年前だったら余裕で寝れたんだろうけど。成長した二人には少し窮屈だ。心は俺が寝れるように横向きになり、こちらを見つめる。
「なんか、懐かしいね」
「……うん」
小学生のときはいつもこうして寝てたっけ。あの時はそばにいても何も感じなかったのに、今はすげードキドキしてる。心臓の音を聞聞かれそうで怖い。大人になるってこういうことなのか。
「心はさ…彼氏いねーの?」
心は答えない。静寂の中、耳を澄ますと規則正しいリズムの寝息が聞こえてくる。もう寝たのか、寝落ち早すぎだろ。
俺は深い溜息を吐いて、心の方に体を向ける。
子どものような寝顔。柔らかそうな頬を軽く突く。
むかつく……けど、かわいい。
俺なら襲わないと思ってんのか。安心して眠る心を見つめながら、俺は小さく呟いた。
「……寝れねーよ、ばか」