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あなたの胸の中で眠る花
第7章 ♢過去*
美咲はずっといじめられていたのだ。
小学校に入った時からずっと。反応が面白いから、とトイレに閉じ込められたり、物を隠されたり、机に落書きなど、日常茶飯事だったらしい。
子どもは意外と賢いので、大人の前では絶対やらない。
だから担任も知らなかった、の一点張りだった。
美咲が、自ら命を絶った日。
体育が始まる前の休み時間に、事は起こった。
教室で着替えている時にクラスメートの一人が、面白半分で美咲の服を取ったのだ。体操着も取られ、薄着のまま走り回された。最終的には、トイレに連れ込み、数人でイタズラをしたという。
その直後、美咲は学校の屋上から飛び降りた。
イタズラがどんな内容だったかは聞かされなかったが、彼女の羞恥心をひどく侵害したはずだ。わずか十歳の少女を死に追い詰めたのは、同級生の軽い気持ちだった。
今までどんな気持ちで、家で笑っていたんだ?
どんな気持ちで、学校に行っていたんだ?
何度問いただしても、一生答えを聞くことはない。
当たり前のように居場所だと思っていた家は、全く居場所ではなかった。知らず知らずのうちに、娘に気を遣わせていたと思うと堪らなく自分に憤慨した。
学校もいじめたやつらも許せない。
でも一番許せないのは…娘の異変に気付けなかった、自分だから。