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溶かされてみる?
第12章 空白の時間と素直な気持ち

母さん達が帰ってきたときは純粋に最初は嬉しかった。
また一緒にいれる。そう思った時もあった。
けどすぐ出て行く。手の届かない場所まで。

みんなといるときは寂しくない。
みんなといると楽しかったし面白かった。
誠司さんも優しくしてくれた。

不幸なことなんてない。
そう思わないとやっていけなかった。
幼い俺にはそう思いながら我慢するしか方法がなかった。

そんな俺に苦い思い出を植え付けた奴が、何年も何年も帰ってこなかった奴が、帰ってきたと恋から告げられたときは、不思議と俺には何の気持ちもなかった。

恋は嬉しくなるはずと思っていたのか、俺の表情を見た途端少し不思議そうな顔をした。

嬉しいなんて気持ちはもうすでに消えていた。
むしろ今更何しにきたって怒りがこみ上げる。

せっかく俺とあいつの間を取り持とうとしてくれた恋に向かって、俺は怒りをぶちまけた。

ただ、余裕がなかった。
恋に謝り、俺はその場を逃げるように去った。

今さら何を話せばいいんだよ。

俺たちの間のこの空白の時は、思った以上にお互いの心を離していた。
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