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浦島と亀
第4章 くりかえされる運命


 その年の春先、浦島は店の若い酌婦と逃げた。


「捨てるぐらいなら殺すと約束して」

 しつこく頼んでいたのに、浦島は守ってくれなかった。


 心のどこかで、いつかこんな日がくると、わかっていたのかもしれない。

 浦島に捨てられたとわかった時、ああやっぱりと思ったのだ。


 それでも、失ったつらさに変わりはない。

 あたしは泣き暮らし、いつ死のうと、そればかり考えていた。



「お母、もう泣かないで」


 息子の存在を思い出したのは、浦島が去ってどれぐらい過ぎたころだっただろう。


 なにもしないで泣いてばかりいるあたしの生活を、幼い息子が店や浜で物乞いして支えてくれていたのだ。

 あたしは何をしていたのだろう……ようやく我に返った。

 家も衣服も身体も汚れはてていたのを、必死で清潔な状態に戻した。

 店に頼み込んで、また働かせてもらうことにした。



 あたしは自分の力で暮らしをたてていかねばならない。

 心を強く持って生きねばならない。


 あたしには大切な息子がいる。


「おいで」

 こざっぱりと姿を整えた息子は、本当に浦島そっくりだった。

 ダメな母親を支えた苦労のせいか、少し翳りをおびているところまで、よく似ていた。


「これからは一緒に寝ておくれな」

 あたしは閨のなかで息子を抱きしめる。

「お父のかわりに」


 大きくなるにつれて、息子はもっと浦島に似てくるだろう。


 あたしが、浦島と同じように育ててあげよう。


 そして、取り戻した浦島と死ぬまで一緒に暮らすのだ。



 あたしは息子にくちづけて笑った。



(完)
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