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貴方だけに溺れたい
第7章 貴方に逢いたい
「野田さん、先に休憩入っちゃいなよ」
「はい。横内さんの方はどうですか?」
「切りの良いところまで終わらせちゃう。午後に持ち越すの嫌だもん」
翌日、葵の職場であるアパレルショップ『rue vivanto(ルー ヴィヴォント)』は、棚卸しを明日に控え、ストックルームの整理に追われていた。
店名の『rue vivanto』はフランス語で『にぎやかな通り』という意味。
30代から50代の主婦層を対象にしたカジュアル服を取り扱っているが、実際に"にぎやか"なのはセール期間くらいで、普段は土日祝日を入れても、店員が2人いれば充分に回せるような小規模の店でもあった。
早番である葵は今日、パートリーダーの横内雅美と共に、朝から接客と雑務の合間を縫って、ストックルーム内の在庫を出来る限り店頭に並べる作業をしている。
2人で全商品の整理をするのはだいぶ重労働ではあるが、そうする事によって明日の営業時間中に棚卸し作業の半分を終わらせる事が出来るからだ。
「ボトムの方が終わったら手伝いますから、無理しないで下さいね」
「うん、頼りにしてる!」
「行ってらっしゃーい」
「行ってきます」
自分の担当する小物類の整理を終えた葵は、遅番のスタッフと交代して休憩に入った。
午後からはボトム類とワンピース。
トップス全般を仕切る横内に比べれば、自分の仕事量は少ない方だとは思うが、葵は今日に限って"定時で上がりたい"という思いが強くなっていたのだ。
通常の勤務時間は17時30分まで。
残業する事無く上がれば、急いで公園に寄って、森川に"トウモロコシのお礼"だけでも言えるかもしれない。
昨日の段階で、来週の月曜日にする事に決めた事ではあるけれど、やはり気になって仕方が無かったのだ。