この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
貴方だけに溺れたい
第1章  木漏れ日

早く……。

「……では、後ほど」

その言葉にフッと浮き上がるような気持ちと安堵を感じた。
そっと窺うように後ろを見ると、電話を切った森川が「ごめん」と呟くように苦笑を見せ息を吐く。

"ごめん"の意味は待たせた事だろうか?
一瞬だけそんな疑問も浮かんだが、先ほどよりも少し砕けた口調に、葵は自然と微笑みを浮かべていた。

しかし漸く森川と向き合い、雑念もまた払拭されたというのに、何を話せば良いのかも分からない。
「時間切れのようです」とスマホを胸ポケットに戻す彼の姿を見つめながら、「はい」と応えるのが精一杯だった。

だけど、ここでしんみりしたって仕方が無い。
また会えるかもしれないのだし、何よりも、森川に重い感情は向けたくは無かった。

「がんばって下さいね」

ありきたりの言葉しか言えないけれど、森川は「わかりました」と応えた後に微笑を浮かべながら葵を見た。

「お会い出来て良かったです」
「…………」

もしかして、天然なのかな……。

爽やかな笑顔でさらりと言う。
その自然な雰囲気に軽薄さや嘘臭さはまるで感じないけれど、思わず深読みしてしまいそうな言葉を口にされると、本当にどう対応すればいいのか困ってしまう。

「ぅわたしも……楽しかったです」

辛うじてそう応えてはいたが、葵は自分の鼓動が少し速まっているのを感じていた。
単純なのか、それともここ数年、こんな律儀なタイプの人に会っていないから、身体が動揺しているのか……。

どちらにしても、森川の発する言葉は不思議と葵の感情を揺さぶる"何か"があった。

「具体的な予定はまだ決まってはいないんですけど、来週あたりから園内で作業はしてるんで、気が向いたら声を掛けて下さい」
「あ、はい」
「景観を損ねないように、茶色いツナギを着てますから」
「そうなんですか?」
「はい、擬態してます。目を凝らして下さいね」
「ははっ、分かりました。見つけます」

しかしそれは、きっと、言葉だけでは無いのだろう。

冗談混じりの森川の話に笑いながら、葵は彼という存在をもっと感じていたいと思っていた。
彼と向き合い、ただ純粋に彼の事だけを考えて過ごしたいとさえ思っていたのだ。

現実から切り離されたような、この場所で……。











/225ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ