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貴方だけに溺れたい
第4章  秘密

「そういえば、森川さんて独身なんだってさ」

智之が森川の名前を口に出したのは、月曜日の朝食時。
土日の二日間は葵が朝から夜まで仕事に出ていた為にまともな会話はしていなかったが、今日になってその名前を聞かされるとは思いもしなかった。

幸い"公園の話"では無いようだったが、"森川さん"というフレーズを聞いだけでドキリとしたのは当然のこと。何しろ葵は金曜日以来、智之の言動に関しては過敏になっていたのだ。

飲み会の時、森川が智之達とどんな話をしていたかは、勿論知らない。
あの時の森川の様子を思い返せば、彼は"昼間に会った"という話はしていないように思えるけれど、自分の予想だけでは確信が持てなかった。
しかし智之は何かを尋ねてくる事は無く、帰宅してから寝るまでの数時間の間も特に変わった様子は無かったから、葵は取り合えず安心はしていたのだ。

それなのにここにきて「そういえば」なんて思い出したように切り出されれば、どんな内容であっても心臓に悪い。
葵は関心が無いといった風に「へぇ、そうなんだ」と応えてはいたものの、数瞬の間に"公園の話"をされた場合に用意していた返答が頭に浮かんでいた。

対して智之の方は「変わってるよね?」と同意を求めながら、どこか皮肉ともとれる笑いを浮かべていたが……。

「……なんで?」
「だって37だよ?結婚に興味無いって言ってたけど、怪しくない?」
「どこが?」
「どこがって聞かれても、なんとなくだけど……」

しかし智之の話は、時に曖昧過ぎて何が言いたいのか分からない。
薄く浮かべた笑みと片側だけ上げた口角で、森川に対する偏見があるのだろうと察したが、葵自身、話の対象が誰であれ、智之のこうした感覚的な話し方自体が好きでは無い。

「印象で判断するのは失礼なんじゃないの?」
「印象じゃないよ。だってあの人、タトゥーしてるんだよ?」
「だから?」
「だから?って、怪しくない?」

ついでに相手も自分と同じ価値観を持っていると思い込み、論理的な説明も出来ないくせに、相手の理解力が悪いとばかりに怪訝な表情を見せるところはもう、ストレスしか感じない。

「何が言いたいのか、さっぱり分からない」

しかし、少なくとも自分が懸念していた話題には行き着かないだろう。
それだけが救いだ……。


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