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わが不滅の恋人 ―永遠に秘密の恋―
第2章 Ich liebe dich (我、汝を愛す)
「なぜこの曲を知っている?」
ヘルローゼ「優しき愛」の詩に旋律を乗せた独唱者のための小品。今から五年前に作曲したのだが、現在出版には至っていない。出版していない曲をなぜフランツは歌えたのだろう。
「ヒ・ミ・ツ、と言いたいところだけど、ゲオルグに教えてもらったんだ」
「あー……」
フランツとの再会をお膳立てした張本人。確かに以前この曲の楽譜を見せたことがある。単純な旋律なので記憶していたのだろう。旋律と詩のタイトルだけわかれば、あとは簡単だ。
「……っ」
「どうしたの?」
「時々耳が痛むんだ。耳鳴りもひどい」
「大丈夫?」
ルートヴィヒが微か顔をしかめたのを、フランツは見逃さなかった。心配そうに長身を屈め、青い瞳でルートヴィヒを覗き込む。
「ああ、大丈夫。でもだんだん悪化しているようで、怖いんだ。僕たち音楽家にとって聴力を失うことは、死ねと言っているようなものだから」
そしてルートヴィヒはフランツに願った。上目づかいに見上げ、乞う。
「もう一度歌ってくれないか。君の歌を、声を、僕の心の中の一番大事な場所にしまっておきたいんだ」
たとえいつか耳が聞こえなくなる日が来ても、心に刻み付けておけばフランツの歌を手放さずに済む。
ヘルローゼ「優しき愛」の詩に旋律を乗せた独唱者のための小品。今から五年前に作曲したのだが、現在出版には至っていない。出版していない曲をなぜフランツは歌えたのだろう。
「ヒ・ミ・ツ、と言いたいところだけど、ゲオルグに教えてもらったんだ」
「あー……」
フランツとの再会をお膳立てした張本人。確かに以前この曲の楽譜を見せたことがある。単純な旋律なので記憶していたのだろう。旋律と詩のタイトルだけわかれば、あとは簡単だ。
「……っ」
「どうしたの?」
「時々耳が痛むんだ。耳鳴りもひどい」
「大丈夫?」
ルートヴィヒが微か顔をしかめたのを、フランツは見逃さなかった。心配そうに長身を屈め、青い瞳でルートヴィヒを覗き込む。
「ああ、大丈夫。でもだんだん悪化しているようで、怖いんだ。僕たち音楽家にとって聴力を失うことは、死ねと言っているようなものだから」
そしてルートヴィヒはフランツに願った。上目づかいに見上げ、乞う。
「もう一度歌ってくれないか。君の歌を、声を、僕の心の中の一番大事な場所にしまっておきたいんだ」
たとえいつか耳が聞こえなくなる日が来ても、心に刻み付けておけばフランツの歌を手放さずに済む。