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わが不滅の恋人 ―永遠に秘密の恋―
第1章 幼き恋心
「いやあ、君たち素晴らしいボーイソプラノだったよ!」
ミサが終わり、紺色のサープレス(聖歌隊服)を着たまま扉から出てきた二人の少年に、恰幅の良い男性が帽子を取り話しかけた。年の頃は五十歳程だろうか。身なりは非常に良い。だが身分的には貴族というわけでもなさそうで、その表情からは多少の胡散臭さも感じられる。男性はにこやかな表情を顔に張り付けたまま話を続けた。
「そこでものは相談なんだが、君たち『カストラート』になる気はないかね?」
「『カストラート』ですか?」
「君たちには才能がある。カストラートになれば富も名声も思いのままだよ」
男性の言う「カストラート」とは変声期を迎える前に去勢した男性歌手のことだ。女性が歌うことを禁じられた教会での演奏会や、高度な歌唱力が要求されるオペラにはこのカストラートを欠かすことができない。
「すぐにはお返事できません。家族に相談しないといけませんし」
二人の少年のうち、金髪の少年が冷静に男性に応じる。すると男性は我に返ったかのように頭をかいた。
「あ、そうだよね。ぜひご家族に相談してみてほしいな。絶対悪いようにはしないから。これが私の連絡先だ。その気になったらぜひ訪ねてくれたまえ」
男性は帽子をかぶり直すと、金髪の少年ではなく隣にいた黒髪の少年に住所の書かれた紙を押し付けるように手渡し、街の中心部に向かって急ぎ足で去っていった。
ミサが終わり、紺色のサープレス(聖歌隊服)を着たまま扉から出てきた二人の少年に、恰幅の良い男性が帽子を取り話しかけた。年の頃は五十歳程だろうか。身なりは非常に良い。だが身分的には貴族というわけでもなさそうで、その表情からは多少の胡散臭さも感じられる。男性はにこやかな表情を顔に張り付けたまま話を続けた。
「そこでものは相談なんだが、君たち『カストラート』になる気はないかね?」
「『カストラート』ですか?」
「君たちには才能がある。カストラートになれば富も名声も思いのままだよ」
男性の言う「カストラート」とは変声期を迎える前に去勢した男性歌手のことだ。女性が歌うことを禁じられた教会での演奏会や、高度な歌唱力が要求されるオペラにはこのカストラートを欠かすことができない。
「すぐにはお返事できません。家族に相談しないといけませんし」
二人の少年のうち、金髪の少年が冷静に男性に応じる。すると男性は我に返ったかのように頭をかいた。
「あ、そうだよね。ぜひご家族に相談してみてほしいな。絶対悪いようにはしないから。これが私の連絡先だ。その気になったらぜひ訪ねてくれたまえ」
男性は帽子をかぶり直すと、金髪の少年ではなく隣にいた黒髪の少年に住所の書かれた紙を押し付けるように手渡し、街の中心部に向かって急ぎ足で去っていった。